- 契約書作成
- 契約書チェック
- 雛形を利用するリスク
- 契約書作成の流れ
目次
不動産に関するよくあるトラブルやご相談例
不動産に関しては、以下のようなトラブルについてご相談を受けるケースが多々あります。
不動産売買に関するトラブル
不動産売買の際には、以下のようなトラブルがよく起こります。
- 購入した不動産に欠陥があった
- 不動産仲介業者の説明が不足していた
- 契約を解除したい
- 不動産詐欺に遭った
- 二重譲渡された
不動産賃貸に関するトラブル
- 賃料を支払ってもらえない
- 賃貸借契約を解除したのに退去してもらえない
- 修繕義務を巡って賃借人とトラブルになっている
- 物件の欠陥によって被害を受けた賃借人から損害賠償請求された
- 賃借人が勝手に第三者へ物件を転貸させている
- 事務所テナントのオーナーが物件を修繕してくれない
- 賃貸借契約を途中解除したい、更新拒絶したい
- 敷金、礼金返還トラブル
- 原状回復トラブル
不動産仲介に関するトラブル
- 不動産仲介業者が消費者から「説明義務違反、調査義務違反」で損害賠償請求された
- 不動産仲介業者がきちんと説明してくれなかったので、契約を解除したい
- 仲介手数料に関して不明点があり、納得できない
共有に関するトラブル
- 不動産の共有状態を解消したい
- 共有物の分割に応じてもらえない
- 共有物件の活用方法について意見が合わない
不動産建築に関するトラブル
- 注文者が代金を払ってくれない
- 注文者が建物に対し、不当なクレームを言ってきて困っている
契約書の作成、チェック
不動産仲介業や不動産建築業、賃貸業を営む企業は、顧客との契約書について「雛形」を用意しているでしょう。
ただ近年、不動産をめぐる大きな法改正があったため、契約書の見直しが必要となっている会社が多いはずです。特に民法改正により「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に変わりましたし、法定利率や「連帯保証人」の取り扱いも変わりました。
また近年では「IT重要説明」が導入されるなど、社会情勢に合わせて不動産の世界もどんどん変わりつつあります。法律面で御社の業務体制をアップデートするためには弁護士によるサポートが必要です。
当事務所では不動産取引に関する処理を非常に得意としております。
取引に関して疑問が生じたとき、先に弁護士に相談して正しい知識をもっておけば、余計な、トラブルを発生させずに済むものです。
不動産売買、賃貸、仲介、共有トラブルなど、お困りごとがございましたら、ご相談ください。
賃料不払いに遭ったときの対処方法
不動産賃貸業を営んでいると、どうしても賃料を払わない賃借人が発生するものです。
そんなときには早い段階で効率的に賃料回収を進めなければなりません。
賃料を滞納されたとき、「少し様子を見よう」と考えてすぐに対処しない方もおられますが、そういった対応をすると、慢性的に遅延が起こってしまう恐れが高まります。弁護士としての経験からいうと、賃料が1ヶ月滞納されたときに即時対応しないとその後も継続的に賃料が払われなくなるケースが半数以上あると感じるので、くれぐれも注意してください。
入金が1日でも遅れたら、すぐに連絡を入れて督促しましょう。
ただしいきなり強硬な態度に出るのはお勧めしません。賃借人との関係が悪化してトラブルが激化したり、かえって賃料が払われにくくなったりするケースもあります。
弁護士に相談して、正しい方法で取り立てを進めましょう。
以下で有効な賃料回収方法をいくつか示します。
賃料が遅れたらすぐに連絡
賃料の入金が遅れたら、まずはすぐに相手に督促しましょう。
電話やメールで状況確認を行い、手紙も送付するようお勧めします。
応答がない場合やつながらない場合には、相手の家を訪ねていって状況を確認しましょう。
「支払いが遅れるとすぐに取り立てが来る」と思わせることにより、その後の継続的な不払いを防ぎやすくなります。
内容証明郵便の送付
電話やメール、郵便などの方法では賃料が払われない場合には、内容証明郵便を使って請求書を送りましょう。
内容証明郵便は郵便局と差出人の手元に控えが残る郵便です。相手に強いプレッシャーをかける効果も期待できるので、送付するだけで支払いが行われる可能性があります。
ただし内容証明郵便自体には強制執行力がないので、相手が支払わなければ差押えなどはできません。次の段階に進む必要があります。
(連帯)保証人に請求する
賃貸借契約では、通常連帯保証人をつけているものです。本人が支払わないなら連帯保証人に請求して賃料を払ってもらいましょう。
保証会社を利用している場合、そちらから支払いを受けられるケースもあります。
賃貸借契約を解除する
相手が3ヶ月以上家賃を滞納して払う様子がなさそうであれば、賃貸借契約の解除を検討しましょう。その後も継続的に支払われない可能性が高くなるためです。
契約を解除するなら「内容証明郵便」を使って契約の解除通知を送るようお勧めします。このとき、滞納家賃全額と遅延損害金の合計額を請求し、相当期間内に払われない場合には当然に賃貸借契約を解除する、と通知するとよいでしょう。
法的措置を講じる
相手が長期に渡って家賃を払わないなら、裁判所で法的措置をとりましょう。
利用できる手続きは主に以下の3つです。
- 支払督促
裁判所に支払督促申立書を提出し、相手が相当期間内に異議を申し立てなければすぐに財産を差押えられる手続きです。相手が異議を出せば通常訴訟に移行します。
なお支払督促で強制執行できるのは家賃不払い分に限られ、相手を強制退去させることはできません。
- 少額訴訟
滞納額が60万円以下であれば少額訴訟も利用できます。少額訴訟は一般の訴訟より手続きが簡素化された訴訟手続です。弁護士に依頼しなくても対応できる方が多く、判決まで1日で出してもらえるので、スピーディに解決できるメリットもあります。
ただし相手が異議を申し立てると通常訴訟に移行します。また強制執行できるのは家賃不払い分に限られ、強制退去させることはできません。
- 通常訴訟
通常訴訟は相手に不払い家賃や明け渡しを請求するために利用できる最終手段です。
3ヶ月分以上の正当な理由のない家賃滞納を証明できれば、裁判所が相手に不払い家賃や遅延損害金の支払い命令と物件の明け渡し命令を出してくれるでしょう。少額訴訟のように限度額もありません。
相手が任意にこちらの要求に応じないときに非常に有効な対処方法です。
- 強制執行
判決が出ても相手が従わない場合、支払督促を無視された場合などには相手の資産を差し押さえる強制執行(差押え)が可能です。預金や賃金、保険解約返戻金などを差押えることにより、滞納家賃を回収できます。
通常訴訟で明渡し命令が出ていたら、強制執行を行って強制退去させることも可能です。
賃借人が家賃を支払わないとき、トラブルをスピーディに解決するには弁護士に相談しましょう。弁護士が内容証明郵便などで賃借人へ未払い家賃を請求すれば、スムーズに支払われて法的手続きが不要となるケースも少なくありません。
訴訟や強制執行が必要となったときにも弁護士に任せていれば安心です。オーナー様に余計な手間は発生せず、普段の業務に専念できるでしょう。
当事務所はこれまで多くの不動産オーナー様から賃料回収や明け渡しについてのご相談をお受けしてきました。1ヶ月分でも賃料を滞納されてしまったら、お早めに弁護士までご相談下さい。
立ち退き·明け渡し
- 賃借人が長期に渡って賃料を支払わない
- 賃借人が勝手に物件を転貸している
- 用法を守らない不良な賃借人がいて困っている
- 賃貸借契約を解除したのに出ていってもらえない
- 物件が無権利者に不法占有されている
賃貸借契約を解除したのに賃借人が居座って出ていかない場合には、強制執行によって明け渡しをさせる必要があります。
ただし賃貸人が勝手に鍵を変えたり賃借人の荷物を捨てたりすると、違法行為となってしまう可能性があるので注意しましょう。
立ち退きを実現したければ、法的に正しい方法で進めなければなりません。
以下で不法占拠者や無権利者を立ち退かせるための手順を解説します。
賃貸借契約の解除通知
賃借人が長期に渡って賃料を支払っていない場合、退去させるためには賃貸借契約を解除しなければなりません。内容証明郵便を使って未払い賃料と遅延損害金の支払いを請求しましょう。請求書において「相当期間内に支払いが行われなければ契約を解除する」と申し添えておけば、賃料が払われないときに解除の効果を発生させられます。
物件からの退去請求
相当期間内に賃料が支払われなかったときには、無権利者となった相手に対し、退去請求をしましょう。
こちらについても内容証明郵便で通知するようお勧めします。
「2週間以内に明け渡すように」などと記載して、期間内に退去しない場合には法的手段をとると申し添えるとよいでしょう。
占有移転禁止の仮処分
内容証明郵便を送っても相手が任意に出ていかない場合には、訴訟を検討しなければなりません。
その際「占有移転禁止の仮処分」が必要となるケースがあります。
占有移転禁止の仮処分とは、物件の占有者を現在の借主に固定するための手続きです。
明け渡しの裁判を行っている間に借主が誰かに占有を移転してしまったら、判決が出ても新たな占有者を追い出すことができません。そのような妨害行為を防ぐため、あらかじめ占有者を賃借人に固定しておくのが占有移転騎士の仮処分です。
占有移転禁止の仮処分が必要かどうか判断するには法的な知識と経験が必要となりますので、不動産トラブル解決に詳しい弁護士に相談しながら決めましょう。
賃料請求·建物明け渡し訴訟
相手を強制的に立ち退かせるには、訴訟で「明け渡し命令」を出してもらわねばなりません。
地方裁判所で不払い賃料や賃料相当損害金の支払いとともに明渡しを求める訴訟を起こし、判決を獲得しましょう。
- 賃料不払い期間が3ヶ月以上になっている場合
- 無断転貸された場合
- 不法占拠者の場合
こういったケースでは、通常判決において不払い賃料(賃料相当損害金)」の支払い命令と明け渡し命令を出してもらえます。
強制執行
判決が下されたら、1度相手に任意で明け渡すよう連絡してみましょう。
それでも相手が従わない場合には、裁判所に「明け渡し断行の強制執行」を申し立てる必要があります。申し立て先は執行官です。
明け渡し断行の強制執行の流れ
- 送達証明書と執行文の取得
まずは裁判所へ申請して「送達証明書」と「執行文」を取得する必要があります。 - 申立
地方裁判所へ強制執行の申立を行います。予納金として6~8万円程度の費用がかかるケースが多数です。 - 執行業者への依頼
強制執行を行うには、「執行業者」という民事執行の専門業者によるサポートが必要になります。執行業者は荷物の搬出などの現実的な作業を行います。 - 現地調査と明け渡しの催告
執行官と現地へ行き、不法占拠者に対して明け渡しの催告を行います。催告の際、期日までに任意に明け渡すよう申し伝えます。なお相手がいなくても紙(公示書)を置いてくるので、催告は可能です。 - 明け渡しの断行
相手が明け渡し断行日までに任意に明け渡さない場合、いよいよ強制執行を行います。このときには執行官と執行業者とともに現地へ行き、荷物を運び出したり相手や家族に出ていってもらったりします。相手が抵抗しても、強制的に追い出すことが可能です。
立ち退き交渉におけるポイントは、こちらのコラムでも解説をしておりますので、ぜひご確認ください。
不動産売買取引
不動産売買に際しては、トラブルが発生するケースが非常に多いので慎重な対応が必要です。
また近年民法改正によって「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に変わり、不動産に欠陥があった場合の対処方法も変更されているので注意しましょう。
今回は契約不適合責任の概要や不動産売買契約書作成時の注意点について、解説します。
契約不適合責任とは
売買契約における契約不適合責任とは、売買の対象物が契約の目的に合っていなかったときに売主に発生する責任です。
たとえば以下のような場合に「契約不適合責任」が発生する可能性があります。
- 物件にシロアリが巣食っていた
- 雨漏りがする
- 耐震偽装物件であった
- 過去に自殺者が出ていたのに売主が隠して売却した
- 改築や再建築に際し、法的な規制があるのに説明されなかった
従来の「瑕疵担保責任」では、欠陥は「隠れたもの(買主が善意無過失)」でなければなりませでしたが、契約不適合責任になって、欠陥が隠れたものである必要はなくなりました。
売主に契約不適合責任が発生すると、買主は以下のような請求が可能です。
- 修繕、代替物の請求
- 代金減額請求
- 損害賠償請求
- 解除
従来の瑕疵担保責任では損害賠償請求と解除のみが認められていましたが、契約不適合責任に変わって修繕・代替物の請求や代金減額請求も認められるようになりました。
ただし契約不適合責任は、「買主が物件の欠陥を知ってから1年以内に売主に通知」しなければなりません。その後、5年以内に交渉や訴訟によって権利を実現する必要があります。
購入した物件に不具合があったら、お早めに弁護士までご相談ください。
不動産売買契約に際してチェックすべきポイント
不動産の売買契約を締結する際には、以下のような点をチェックしましょう。
現地の確認
不動産を購入する際には、必ず事前に現地へ行ってご自身の目と耳で状況を確認してください。
特に不動産投資を行う場合、物件を見ずに契約してしまう方が少なくありません。
しかし確認しないとキズや汚れ、周辺環境や欠陥などの問題点に気づかないでしょう。
後から契約不適合責任を問えるとはいえ、手間もかかりますし相手から抗弁を主張される可能性もあります。
必ず契約前に現地を確認して、以下のような点をチェックしてみてください。
- 立て付けは悪くなっていないか
- 壊れている箇所はないか
- 各種設備、水回りの状態
- エントランスやゴミ捨て場の管理状況
- エレベーターの動作音
- 近隣に騒音や悪臭の原因はないか
- 物件の日当たり
- 病院、スーパー、コンビニなどの周辺施設
写真も撮影し、気になるところはメモしておくとよいでしょう。
なお新築物件の場合「住宅の品質確保の促進等に関する法律」により、建物の基本構造部分の瑕疵担保責任を、完成引渡から10年間請求できます。
登記簿や図面の確認
不動産売買を行う際には、必ず不動産の登記簿(全部事項証明書)や図面を確認しましょう。
他に共有者がいる場合、抵当権が設定されている場合などもあり、気づかないで契約するとトラブルに巻き込まれる可能性が高くなります。
近隣の土地所有者との間で境界確認ができているかもチェックしてください。
重要事項説明
不動産を購入するときには、仲介に入った不動産会社(宅地建物取引業者)や売主となった不動産会社から「重要事項説明」が行われます。
重要事項説明は宅建業者の義務です。物件の内容や取引条件など買主にとって重要な事柄が説明されるので、しっかり聞いて理解しましょう。納得できない点があれば、契約すべきではありません。
また重要事項説明が終わったら買主が署名押印し、1枚控えを交付されます。後に問題が起こったときの証拠になりますので、大切に保管しましょう。
建築制限や用途地域の確認
土地には場所によってさまざまな建築制限が課される可能性があります。
たとえば都市計画法によって「用途地域」が定められますし、条例によっても建物の種類や高さ、容積率が制限されるケースが少なくありません。
将来売却するときや再建築するとき、こういった法令による規制が大きな影響を及ぼす可能性があるので、土地や建物を購入する際には必ず建築制限についても確認しておきましょう。
申込証拠金、手付金の取り扱い
不動産売買を行うときには、通常「手付金」のやり取りをします。
申込証拠金は、不動産の購入希望者が物件購入を申し込むときに販売業者へ支払うお金です。手付金は中古物件の売買などの際、お互いに契約を締結したことを確認し安易に解約できないように先渡しするお金です。
いったん申込証拠金や手付金を支払うと、途中解約するときに払ったお金が没収されてしまう可能性があるので注意しましょう。具体的にはきちんと契約書を読んで、内容を理解してから署名押印すべきです。
不動産売買では、買主も売主も法律による規制内容を正確に知り、トラブルにならないよう適切に対応する必要があります。取引に入るとき、弁護士に相談すれば契約書に問題がないかチェックできますし、トラブルが起こった際にもスムーズに解決できるものです。
不動産会社において契約不適合責任などの民法改正に対応した契約書が必要な際にも、弁護士が適切な書面を作成いたします。
不動産取引に関するお悩みごとがありましたら、お早めにご相談ください。
不動産賃貸契約
不動産賃貸契約では、賃料不払い以外にも押さえておくべきポイントがいくつもあります。
トラブルを予防するためにも、正しい知識をもっておきましょう。
以下で重要なポイントをご紹介します。
契約の途中解約
物件を貸し出しても、大家が使用したい事情が生じるケースが少なくありません。
そんなときでも、簡単に解約できるとは限らないので注意が必要です。
賃貸借契約において、賃借人は非常に強く保護されます。途中解約には正当事由が必要となり、正当事由の有無は下記のような事情を総合考慮して相当厳しく評価されると考えましょう。
- 賃貸人が建物や土地を利用する必要性
- 賃借人が建物や土地を利用する必要性
- 建物の状態や利用状況
- 賃料
また正当事由を補完するために、賃貸人が「立退料」を払わねばならないケースも多々あります。賃貸人側が賃借人へ強硬に立ち退きを求めると、大きなトラブルになってしまうおそれがあるので注意しましょう。
賃貸借契約の更新拒絶、更新料
賃貸借契約の更新についても同じことがいえます。賃貸人が契約の更新拒絶をするには、「正当事由」が必要で、期間が終了したからといって当然に退去を求められるとは限りません。相手に出ていってもらいたい場合には、よく話し合って理解を求めましょう。一定の立退料を払わねばならないケースも多々あります。
合意によって更新する場合、あらかじめ更新料の取り決めをしていれば更新料を請求できます。一方で合意更新せず法定更新となった場合には、当然には更新料を請求できません。契約書内に「法定更新の場合にも更新料が発生する」と書かれていれば更新料を請求できる可能性があります。
定期賃貸借契約について
いったん賃貸借契約を締結すると、賃貸人側は「正当事由」がないと途中解約や契約の更新拒絶ができません。延々と契約が続いてしまい、自己使用は不可能となってしまいます。
もしも近い将来に物件を利用する予定があり、確実に契約期間の満了とともに物件を返してもらいたいのであれば「定期借地契約」または「定期借家契約」を利用しましょう。
こういった類型の契約であれば、期間の満了とともに賃貸借契約が終了するので、物件を確実に返還してもらえます。
ただ定期借地・借家契約にもいくつかの種類があり、たとえば「事業用定期借地契約」の場合には公正証書で契約書を作成しなければならないなどのルールを守らねばなりません。
土地や建物の活用方法の際には、きちんと法律的な理解を深めてから実行すべきです。まずは一度、弁護士までご相談ください。
契約終了時の原状回復と敷金の返還
賃貸借契約を終了する際には、原状回復や敷金返還請求権が問題となるケースが多々あります。
法律上、物件を返還するとき賃借人は「原状回復」しなければなりませんが、「借りたときとまったく同じ状態」に戻す義務はありません。経年劣化による自然な傷みについてまでは責任を負わないと理解されています。大家から過剰な負担を求められたら断ることが可能です。
また「敷金」は基本的に返さねばならないお金です。ただ一定までの金額であれば、敷引き特約も有効となります。あまりに高額な敷引きが行われるとその条項が無効となる可能性もあるので、注意しましょう。
「礼金」については、基本的に返還請求できないものと理解されています。ただし極めて短い居住期間だったケースにおいて、一部の礼金返還請求権が認められたケースもあります(大阪簡易裁判所平成22年(ハ)第27941号)。
敷金礼金関係でトラブルが起こるケースが多いので、正確に理解しておきましょう。
賃料の増減額請求
一度賃貸借契約を締結した以上、賃貸人や賃借人の都合で一方的には賃料を変更できません。基本的には両者の合意によって変更する必要があります。
ただし物件にかかる公租公課や周辺の賃料との比較などからして、賃料額が不適正な金額になっている場合には、裁判所へ申し立てて賃料を増減額してもらえる可能性があります。
裁判所で賃料を変更してもらうには、まずは「調停」をしなければなりません。いきなり訴訟はできないので注意しましょう。
調停が不成立になると、訴訟を起こせます。裁判所で鑑定等が行われ、現在の賃料が不適正と認められれば適正な金額に修正してもらえる可能性があります。
なお賃貸借契約によって「賃料不増額特約」がついていると、賃貸人側からの賃料増額請求ができません。
一方で「賃料不減額特約」は賃借人を不当に害するものと考えられるので、無効です。そういった条項をもうけても、賃借人は賃料増額請求できると考えられているので、注意しましょう。
当事務所では各種の不動産取引、契約書の作成、チェック、不動産賃貸に際してのトラブル解決などの力を入れております。迷ったときにはお早めに弁護士までご相談ください。
この記事を書いた人
山本 哲也
早稲田大学法学部卒業後、一般企業に就職するも法曹界を目指すため脱サラして弁護士に。
「地元の総合病院としての法律事務所」を目指し、個人向けのリーガルサービスだけでなく県内の企業の利益最大化に向けたリーガルサポートの提供を行っている。