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団体交渉の進め方を弁護士が解説|労働組合からの申し入れから解決までの流れ

「労働組合からいきなり団体交渉を申し入れられた」とお困りでしょうか?

団体交渉に慣れていないと、労働組合からの申し入れにどう対応すればよいかわからないでしょう。

申し入れを放置してはなりませんが、話し合いに応じていれば、要求内容を受け入れる義務まではありません。団体交渉の申し入れから解決までの流れを知っておき、不適切な対応をしないように気をつける必要があります。

この記事では、

  • 団体交渉の申し入れがあった場合の初動対応
  • 団体交渉における具体的な流れ
  • 団体交渉の申し入れはすべて応じる必要があるか、決裂するとどうなるか

などについて解説しています。

労働組合から団体交渉を申し入れられてお困りの企業担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。

 

団体交渉の申し入れがあった場合の初動対応

団体交渉申入書

労働組合から団体交渉の申し入れがあった際には、初動対応が重要です。対応を誤ると、不当労働行為として違法になるなど、様々なリスクがあります。以下の点に注意してください。

申入書の内容確認

団体交渉の申し入れは、郵送・FAXによりなされる場合もあれば、直接書面が持参される場合もあります。いずれにせよ「団体交渉申入書」などの名称がつけられた書面を受け取るのが一般的です。

申入書が届いたら、以下のポイントを中心に内容を確認してください。

申し入れをした労働組合

わが国の労働組合の多くは企業別組合です。もっとも近年は、地域ごとに結成され、企業や雇用形態に関係なく加入できる合同労組(ユニオン)からの団体交渉の申し入れが目立っています。

聞いたことのない労働組合からの申し入れであったとしても、原則として対応が必要です。団体名をネットで検索し、規模や活動実態を調べましょう。組合の活動方針によって、企業がとるべき対応も変化します。

要求事項

組合側が何を要求しているかを確認します。解雇無効、ハラスメントへの対応、賃金体系など、要求事項はケースバイケースです。個人的な問題なのか、従業員全体に関わるかによって対応の仕方が変わります。

退職した従業員が組合に加入して団体交渉を申し入れてきたケースでも、解雇無効や未払い賃金などの交渉には応じなければなりません。安易に拒否しないようにしてください。

日時・場所

申入書で交渉の日時・場所が指定されている場合があります。とはいえ、指定された通りにする義務はなく、調整が可能です。詳しくは後述します。

相談・対応できる弁護士の確保

対応してもらえる弁護士を探すのも重要です。

多くの企業は、団体交渉の対応に慣れていないでしょう。反対に労働組合は、いわば団体交渉のプロです。専門家をつけずに交渉に臨むと、相手の圧力に屈し、要求を無理やり受け入れさせられるリスクがあります。

組合と対等に渡り合うには、弁護士に相談し、対応に関するアドバイスを受けるべきです。弁護士は団体交渉の場への同席も可能です。対応が後手に回らないように、早めに弁護士を確保してください。

【参考】顧問弁護士をお探しの方へ

申し入れに関する対応方針の確定

交渉当日までに、要求事項に関する会社としての対応方針を決めなければなりません。事実関係を調査したうえで、反論や妥協できる範囲などを検討します。

団体交渉には応じなければなりませんが、要求を受け入れる義務まではありません。要求を受け入れない場合には、理由を説明できるようにしましょう。事前準備として、場合によっては想定問答集や説明資料の作成も必要です。

団体交渉における具体的な流れ

フロー

団体交渉は、大まかに以下の流れで進みます。

開催に向けた日程調整

まずは、日時・場所等の調整を行います。記録が残るように、組合への回答は書面でするべきです。

日時

申入書に日時を指定されていたとしても、都合がつかない場合もあるでしょう。必ずしも従う義務はありません。

とはいえ、あまりに先の日程を提案すれば、事実上の団体交渉拒否とみなされてしまいます。数週間以内にしてください。

時間帯としては、勤務時間外が望ましいです。勤務時間中の交渉を認めると、賃金カットの必要が生じたり、今後の慣例となってしまったりする問題があります。

交渉時間には限度を設けておくのがおすすめです。時間制限がないと、必要以上に長引くおそれがあります。短すぎても交渉拒否ととられてしまうため、2時間程度がよいでしょう。

場所

場所については、会社会議室にするよう求められる場合があります。しかし、他の従業員の目に触れるうえに、時間が長くなりやすいです。かといって組合の事務所にすると、相手のペースで進んでしまうリスクがあります。

そこで、外部の貸会議室を利用するのも有力な選択肢です。貸会議室であれば、予約時間を理由にして、交渉が長引くのを防止できます。

出席者の人数

出席者の数は制限しておくのがよいでしょう。

無制限とすると、組合員が大勢押しかけて圧力をかけ、まともに交渉できない可能性があります。あらかじめ、労使各3~5人程度に制限するのがおすすめです。

団体交渉の開催

団体交渉当日は、労働組合の要求事項に対して、会社側が回答します。

会社が要求を受け入れる義務はありません。もっとも、会社には誠実交渉義務が課されています。出席するだけでなく、回答の具体的な根拠・資料を示すなどして、中身のある話し合いをしなければなりません。

交渉の場で新たな要求事項が示されたときには、持ち帰って次回までに検討することも可能です。その場で不用意に約束をすると、後にトラブルになってしまいます。

交渉には、妥結させる権限がある者が出席する必要があります。権限を有する者を出席させず、すべての事項を「持ち帰って検討する」としてはなりません。ただし、社長・代表者が出席すると「この場で決めろ」などと迫られるリスクもあります。他に一定の権限を有する人がいれば、社長が出席する必要はありません。

交渉において特に注意すべきなのは、労働組合が用意した書類にサインしないことです。名目が何であれ、労働協約として強い効力が生じるおそれがあります。

交渉の内容は、録音しておきましょう。次回以降の交渉に備えるとともに、後で「言った、言わない」の争いが生じるのを防ぐためです。

和解による解決・終結

交渉の結果、合意できたときには、合意事項について書面を作成して終結します。書面は労働協約として、就業規則や個別の労働契約よりも強い効力を有します。

労働協約は、書面にして両当事者が署名または記名押印しなければ効力が生じません。後のトラブルを防ぐために、組合だけでなく、加入している従業員のサインもあると確実です。

 

団体交渉に関するよくある質問

Q&A

団体交渉に関してよくある質問をまとめました。

団体交渉には全て応じる必要がある?

団体交渉は、正当な理由がない限り拒否できません。正当な理由なく拒否すると、不当労働行為となります(労働組合法7条2号)。

実務上、正当な理由が認められるケースはほぼありません。たとえば以下の理由は、基本的に団体交渉を拒否する理由にはならないので注意してください。

  • 既に退職している
  • 合同労組とは交渉できない
  • 裁判になっている
  • 組合員名簿を提出しない

交渉そのものは拒否できませんが、要求をすべて受け入れる必要はありません。ただし、会社は誠実交渉義務を負っています。単に交渉の場に出るだけでなく、根拠を示して主張を説明するなど、中身のある話し合いをしなければなりません。

交渉が決裂したらどうなる?

団体交渉が決裂すると、組合側が以下の行動に出る可能性があります。

  • 街宣活動・ビラ配り
  • 労働委員会への救済申立て、あっせん手続きの利用
  • 労働基準監督署への申告
  • 裁判所での労働審判・訴訟

交渉が決裂すると、実力行使や他の機関への申立て等が予想されます。決裂したらどうなるかを想定したうえで、交渉に臨まなければなりません。

団体交渉の申し入れを放置することのリスクは?

聞いたことのない労働組合から団体交渉を申し入れられると、放置する会社もあります。しかし放置すると、団体交渉拒否として不当労働行為になる可能性が高いです。

結果的に、訴訟を提起されるほか、労働委員会から救済命令が発せられ、それも無視すると行政罰や刑罰が科されるなど、トラブルが大きくなると想定されます。

団体交渉の申し入れを放置してはなりません。知らない労働組合からの申し入れでも、対応するようにしてください。

団体交渉対応に関するご相談は弁護士法人山本総合法律事務所へ

集合写真

ここまで、労働組合からの団体交渉申し入れへの対応に関して解説してきました。

団体交渉の申し入れを無視してはなりません。要求を受け入れる義務はありませんが、交渉の場で十分な根拠を示して回答する必要があります。

群馬で団体交渉を申し入れられてお困りの企業の方は、弁護士法人山本総合法律事務所までご相談ください。

当事務所は、群馬県内でも規模が大きい弁護士事務所のひとつです。これまで、群馬・高崎に密着して、地域の企業の皆様から団体交渉対応に関する数多くの相談を受けて参りました。トラブルが拡大しないよう、適切な対応方法をアドバイスいたします。

団体交渉対応に関してお悩みの点がある方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

【参考】企業の労務対策は弁護士までお任せください

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この記事を書いた人

山本 哲也

山本 哲也

弁護士法人 山本総合法律事務所の代表弁護士。群馬県高崎市出身。
早稲田大学法学部卒業後、一般企業に就職するも法曹界を目指すため脱サラして弁護士に。
「地元の総合病院としての法律事務所」を目指し、個人向けのリーガルサービスだけでなく県内の企業の利益最大化に向けたリーガルサポートの提供を行っている。

山本 哲也

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