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消費者からのクレームにお悩みでしょうか?
クレームの中には正当なものもありますが、悪質なクレームも少なくありません。クレームに適切に対処しないと、従業員の士気低下や離職に加え、企業のイメージダウンにつながってしまいます。
もっとも、適切な対処法さえ知っておけば、過度にクレームをおそれる必要はありません。
本記事では、
- クレームに適切に対処しないリスク
- クレームに対処する際のポイント
- クレームの対処法について弁護士に相談すべき理由
などについて解説しています。
最後まで目を通せば、クレームへの対処法がわかります。消費者からのクレーム対応にお悩みの方は、ぜひお読みください。
目次
クレーム対応に関する基礎知識
クレームに明確な定義はありませんが、一般的には、企業の商品やサービスに対する苦情や要求をいいます。
クレームは貴重な意見であり、商品・サービス改善のために有益な場合も多いです。しかし、近年は無理な要求をする悪質なクレームが問題になっています。
まずは、クレームの発生要因や種類など、クレーム対応のために必要な基礎知識を解説します。
クレームの発生要因
通常のクレームは、企業が提供した商品・サービスや接客態度が、消費者が求める水準を下回った場合に発生します。求める水準が高い消費者も少なからずいるため、クレームをゼロに抑えるのは困難です。加えて、企業に非がなくても、顧客の勘違いや悪意により発生する場合も少なくありません。
クレームの発生要因は、大まかに以下の3つに分けられます。
- 商品やサービスの問題
- 顧客対応の問題
- 顧客自身の問題
それぞれについて詳しく解説します。
商品やサービスの問題
企業の商品やサービスそのものに問題があってクレームが発生するケースです。
- 商品が説明書通りに使えない
- 食品に異物が混入していた
- 飲食店で提供までの時間が長い
製品の初期不良や異物混入などは、多くの人が問題と感じやすい例です。特に不満が大きいときに、クレームへと発展します。
飲食店の提供時間は、10分で遅いと感じる人もいれば、30分でも気にしない人もいるでしょう。客の要求水準によってクレームになるかが変わる例です。
顧客対応の問題
商品・サービスそのものよりも、従業員の対応に問題があってクレームになる場合もあります。
- 店員の愛想が悪い
- たらい回しにされた
- クレームに対して謝罪がない
接客態度に関しては、人によって大きく感じ方が異なるかもしれません。
クレームへの対応に不満を持ち、さらにクレームが大きくなるケースもあります。
顧客自身の問題
顧客自身のミス・勘違いや悪意によってクレームが発生するケースも考えられます。
- 説明書で禁止された使い方をして商品が破損した
- 洋服のサイズを誤って注文した
- 個人的に企業に恨みがある
ミスや勘違いについては、顧客に非があるとはいえ、企業側の説明が不足していた可能性も考えられます。
個人的な恨みなど悪意を持ってクレームを入れられたときには、毅然とした対応が必要です。
クレームの種類
クレームは大まかに、正当なものと、悪質で不当なものに分けられます。
正当なクレーム
クレームといえばネガティブな印象を持たれがちですが、正当なクレームもあります。正当なクレームとは、消費者の言い分が事実で会社側に非があり、要求内容や方法も妥当な範囲内におさまっているクレームです。
- 食品の賞味期限が過ぎていたので交換してほしい
- 商品がいつまでも到着しないが早く発送してほしい
- スーツに飲み物をこぼされたのでクリーニング代を払ってほしい
これらは事実であれば、会社側に責任があります。謝罪したうえで、返品・交換・損害賠償など、必要な対応をとらなければなりません。対応が遅れると、企業の信用を損ねてしまいます。
正当なクレームは、商品・サービスの改善につながる貴重な意見です。真摯に対処するようにしましょう。
悪質なクレーム
問題なのは悪質なクレームです。悪質なクレームとは、内容あるいは方法が不相当なクレームをいいます。
内容が不相当なクレームとは、事実自体が存在しない、存在しても会社に非がない、会社に非があっても要求が過大であるといったケースです。以下の例が挙げられます。
- 食品に客が自ら異物を入れた(原因となった事実自体が存在しない)
- 説明書通りに使わず商品が壊れた(事実は存在するが会社に非はない)
- オーダーミスに対し土下座を要求する(会社に非はあるが要求が過大)
方法が不相当なクレームとは、かりに内容が正当だとしても、訴える方法が常識を逸脱しているケースです。以下の例があります。
- 「火をつけるぞ」と脅迫する
- 殴る・蹴るなど暴力をふるう
- 執拗に電話をかける
不当な要求に応じる必要はありません。しかし、何も対応しないとSNSで誹謗中傷を受けるなど、被害が広がるおそれもあります。悪質なクレームへの対処は、企業にとって難しい問題です。
クレームとカスタマーハラスメントの違い
悪質なクレームの中には「カスタマーハラスメント」と呼ばれるものも存在します。カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客による嫌がらせです。
クレームとカスハラは似た概念です。違いとしては、クレームは通常何らかの要求を含むのに対して、カスハラは嫌がらせであり、要求が含まれない場合もある点が挙げられます。
また、クレームは正当な場合もあるのに対し、カスハラはすべてが不当です。実際には、悪質(不当)なクレームがカスハラにも該当するケースは多いでしょう。
したがって、クレームとカスハラを分けて考えるよりは、「正当なクレーム」と「悪質なクレーム(カスハラ含む)」を区別するのが重要です。正当なクレームか悪質なクレームかによって、対応方針が大きく変わります。
上述した通り、正当なクレームは内容や方法がいずれも正当なものであり、悪質なクレームは内容あるいは方法のいずれかが不当なものです。
とはいえ、正当なクレームと悪質なクレームの区別は、容易ではありません。両方が混ざったクレームや、最初は正当でも途中から悪質になるクレームが存在するためです。現実には、対応していく過程で正当か悪質かを見極め、対処していく必要があります。
【参考】消費者トラブル・クレーマー
クレームに適切に対処しないリスク
悪質なクレームに適切に対処しないと、企業にとっては以下のリスクがあります。
従業員の士気低下
悪質なクレームは、従業員の士気を低下させます。
クレーマーは理不尽な要求をしてきますが、顧客である以上、従業員は対応しなければなりません。本来すべき業務に集中できなくなり、生産性が低下します。
クレーム対応を希望して就業している従業員はほぼおらず、全員が対処できるスキルを持っているわけではないため、精神的には大きな負担になるでしょう。会社側が責任を持って対応しないと、嫌気がさして離職したり、精神疾患になって休職したりする可能性があります。
悪質なクレームにより、苦労して育てた従業員のモチベーションが下がって実力を発揮してもらえなくなると、企業にとっては大きな損失です。
企業イメージの毀損
クレームへの対応を誤ると、企業の社会的なイメージが低下します。
正当なクレームに対処しないとイメージが悪化するのは、想像できるでしょう。クレームをつけた本人や周囲だけでなく、ネットやメディアで情報が広まれば社会全体に影響が波及します。
それだけでなく、会社に非がない悪質なクレームについても、会社の評価にダメージになるリスクがあります。
たとえば「食品に異物が混入していた」とクレームがあったときに、あり得ないと考えて対応を怠ったとします。消費者の自作自演であったとしても、異物混入の画像がSNSで拡散されれば、いったん信用される可能性が高いです。後から火消しに走ったとしても、一度ついたイメージを覆すのは簡単ではありません。
イメージが悪化すれば、売り上げ低下などの影響が生じてしまいます。
安全配慮義務違反による損害賠償
悪質なクレームへの対応を怠ると、従業員から損害賠償請求を受けるリスクもあります。
会社には「安全配慮義務」が課されています。安全配慮義務とは、雇用する労働者の心身の健康に配慮する義務です。
クレームの対応にあたった従業員が精神疾患に罹患するなどすれば、会社が安全配慮義務違反に問われる可能性があります。
たとえば、非がない従業員に会社が無理やり謝罪させたケースや、クレーマー対応を担当者ひとりに押しつけてうつ病になったケースです。
安全配慮義務違反があると、従業員への損害賠償が発生します。現場に丸投げにするのではなく、マニュアル整備や発生時のサポートなど、会社として必要な対応をとらなければなりません。
消費者からのクレームに対処する際のポイント
クレームへの対処を誤ると、様々な問題が生じます。トラブルの拡大を防ぐために、以下のポイントに注意してください。
初動対応
クレームへの初動対応は重要です。適切な対応ができればクレームが収まる可能性がある一方で、反対に怒りを増幅させてしまうケースもあります。
クレームがあったときには、まず謝罪をしましょう。最初から悪質なクレームだと明らかなケースは、多くはありません。正当なクレームに対して謝罪しなければ、企業のイメージが損なわれます。勝手に「悪質なクレーマー」「カスハラ」とのレッテルを貼らないようにしてください。
ただし、謝罪の対象は「不快感を与えたこと」です。事実が明らかでない段階で全面的に謝罪すると、相手が「自分が正義だ」と勘違いして付け上がるおそれがあります。
謝罪したら、相手の言い分をよく聞いてください。正当か不当かは別にして、クレームの原因となった事実関係や、要求している内容を把握するのは不可欠です。
その際には、言い分を聞くことに徹しましょう。会社や従業員個人としての意見を伝えるのは、事実関係が明らかになって方針が決まってからにしてください。
相手の言い分は録音あるいはメモに残しておくとよいです。社内で情報を共有できる上に、後にトラブルが拡大した際には証拠としての意味も持ちます。言い分のほかに、相手の名前や連絡先も記録しておきましょう。
事実調査の徹底
謝罪してクレームの内容を聞き取ったら、事実関係の調査を進めてください。クレームの原因が本当に存在したか否かで、その後の対処法が大きく異なります。
事実調査の際には、従業員への聞き取りのほか、録音記録の確認などを行います。必要であれば、相手から資料の提出を受けてください。
事実調査において重要なのは、どちらが悪いと先に決めつけないことです。先入観を排して、できるだけ客観的な視点で事実を確認するように心がけましょう。
徹底的な調査で事実を明らかにできれば、対応を誤るリスクが格段に減ります。
対処方針の決定・実行
事実関係が明らかになったら、対処方針を決定したうえで、相手に通知して実行に移してください。
正当なクレームであったときには、謝罪とともに、返品・交換・損害賠償の支払いなどケースに応じて必要な対応をしましょう。法律上すべきことはもちろん、お詫びの意を示すためにプラスアルファの対応も考えられます。
原因となった事実が確認できない、要求が過大であるなど悪質なクレームであったときには、応じられない旨を伝えてください。クレームを収めるために安易に要求に応じると、相手が付け上がって要求が拡大するおそれがあります。できないことは明確に伝えて、要求が通らないと思わせるのが重要です。
伝える方法はケースバイケースですが、証拠を残す観点からすると書面が望ましいです。内容を吟味したうえで、後から問題が生じないように書面を作成する必要があります。
応じられないと伝えても何度も繰り返されて業務に支障が出る場合には、法的手段も検討してください。刑事告訴や民事上の手続が考えられます。
クレーム対応方法の整備
実際にクレームが発生した際の対処法は以上の通りですが、事前に対応方法を整備しておくのも重要です。
会社として対応方法が固まっていないと、担当者によって言っていることが違う、客によって対応が異なるといった事態が生じかねません。「別の人は補償してくれると言っていた」「他の客は返品してもらったのに自分はされないのか」などと、クレームが増幅されてしまうのです。
したがって、クレームがあった際の報告体制や、事実調査の流れ、方針決定の責任者などをあらかじめ決定しておく必要があります。
具体的な対応方法は、マニュアルの作成や研修により従業員に伝えてください。特に悪質なクレームについては、事前対策をとっていないと多くの従業員が対応できません。従業員を守るためにも、担当者任せにするのではなく、組織として対応するように体制を整備しましょう。
クレームはいつ発生するかわからず、繰り返されるものです。発生する前や1度発生した後は、体制の整備により今後のクレームに備えてください。
カスタマーハラスメントとの線引きの理解
正当なクレームと悪質なクレーム(カスタマーハラスメント含む)との線引きをできるようにしておくのも重要です。いずれに該当するかによって、対応が大きく異なります。
両者の区別は難しいです。最初は区別がつかず、詳細な言い分の聞き取りや事実関係の確認の過程で明らかになるケースも少なくありません。当初は正当であったのに、次第に要求がエスカレートして悪質なクレームになるケースもあります。
悪質なクレームの特徴としては、以下が挙げられます。
- 事実に基づいていない
- 会社に責任がないのに要求する
- 要求が過大である
- 暴行・脅迫など要求方法が不適切である
正当なクレームと悪質なクレーム(カスタマーハラスメント)との線引きは、マニュアルや研修を通じて、事例とともに従業員に理解してもらうようにしましょう。
クレームの対処法について弁護士に相談すべき理由
クレームへの対処法にお悩みの方は、弁護士への相談がおすすめです。弁護士には以下の点を依頼できます。
事実関係の調査・証拠収集
クレーム対応では、事実関係がポイントになるケースが多いです。とはいえ、社内で正確に事実調査をするのは容易ではありません。
弁護士は法律のプロであるとともに、事実調査にも精通しています。社内での聞き取りのほかに、一般の方が取得できない情報でも、弁護士会照会を利用した収集が可能です。
弁護士に任せれば、証拠を集めて正しい事実を把握し、クレームが正当か否かを判断できます。結果として、クレームへの対処方針を間違えるリスクを抑えられます。
消費者との紛争に発展してしまった時の対応
クレーマーとトラブルになってしまっても、弁護士がついていれば安心して対応を任せられます。
弁護士は法的根拠に基づいて交渉ができるため、相手の不当な要求を諦めさせることが可能です。毅然とした対応を行い、無理な要求を飲まずにすみます。弁護士の名前で内容証明郵便を送るだけで、クレームがおさまるケースも少なくありません。
交渉で解決が難しいときには、法的措置をとります。方法としては、刑事告訴と民事上の手続が考えられます。
刑事告訴を検討するのは、消費者の行為が犯罪に該当するケースです。
悪質なクレームは、たとえば以下の犯罪に該当する可能性があります。
- 不利益を与えると脅す →脅迫罪
- 土下座させる →強要罪
- 暴力をふるう →暴行罪、傷害罪
- 業務に支障を与える →威力業務妨害罪
- 敷地から立ち去らない →不退去罪
- 誹謗中傷する →名誉毀損罪、侮辱罪
刑事告訴の結果、検察官が起訴すれば、クレーマーに刑罰が科されます。
刑事事件にしないとしても、以下のように民事上対処する方法もあります。
- 会社に損害が出たとき →損害賠償請求訴訟
- 応じる義務がないとき →債務不存在確認訴訟
- 行為をやめさせるとき →仮処分
いずれにしても、企業が自力で進めるには手間がかかります。
弁護士に交渉や法的措置を任せれば、企業はクレーマーを直接相手にする必要がありません。本業に集中できるとともに、担当者の精神的な負担を削減できます。
クレーム対応におけるマニュアルの整備
クレームそのものへの対応だけでなく、実際にクレームが生じる前後に弁護士が対策を練ることもできます。
弁護士に任せられるのは、対応マニュアルの整備や、クレームに関する研修などです。
マニュアルには、初動、事実調査、方針決定・実行という流れの中で各部署がいかなる行動をとるかなどを記載します。マニュアルがあれば、人によって対応が異なる、ひとりだけに負担が集中するといった事態が避けられ、組織的な対応が可能です。
マニュアルだけでなく、弁護士による研修を通じて、従業員にクレームへの対応方法を伝えられます。マニュアルや研修はオーダーメイドで作成するため、企業の規模や扱っている商品・サービスにふさわしい内容にできます。
クレーム発生時の対処だけでなく、事前・事後の対策もできる点は、弁護士に依頼するメリットのひとつです。
消費者問題に関するご相談は弁護士法人山本総合法律事務所へ
ここまで、クレームの対処法に関して、要因・種類、適切に対処しないリスク、対応のポイント、弁護士に相談するメリットなどについて解説してきました。
正当なクレームは貴重な意見であり、真摯に対応しなければなりません。他方で悪質なクレームは、従業員の士気低下など大きな弊害をもたらします。
事実を徹底的に調査したうえで、クレームが不当だと判断した際には、要求に安易に応じてはなりません。毅然とした態度で臨みましょう。
自社での対応が難しければ、弁護士に任せられます。発生時の対応だけでなく、事前事後の対策も可能です。
群馬で消費者からのクレームに関してお悩みの方は、弁護士法人山本総合法律事務所までご相談ください。
当事務所は、群馬県内でも規模が大きい弁護士事務所のひとつです。消費者に関する問題についても、マンパワーを生かして機動的に対応いたします。事実調査や交渉・法的措置に加えて、マニュアル整備や研修のお手伝いも可能です。クレーム対応のほかにも、消費者トラブル全般についてご相談いただけます。
当事務所は、群馬・高崎に密着して、地域の企業の皆様からクレーマー対策や消費者トラブルに関する数多くの相談を受けて参りました。消費者問題に関してお困りの点がある方は、まずはお気軽にお問い合わせください。
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この記事を書いた人
山本 哲也
弁護士法人 山本総合法律事務所の代表弁護士。群馬県高崎市出身。
早稲田大学法学部卒業後、一般企業に就職するも法曹界を目指すため脱サラして弁護士に。
「地元の総合病院としての法律事務所」を目指し、個人向けのリーガルサービスだけでなく県内の企業の利益最大化に向けたリーガルサポートの提供を行っている。