会社の経営難で破産すべきかどうか悩まれている経営者の方も少なくないことでしょう。
そこで今回は、会社の経営が苦しくなっている経営者の皆様に向けて、法人破産の基本について解説していきます。
目次
会社の経営が苦しくなってきた経営者の方の多くは、債権者に掛け合って、負債の減額や分割回数を増やすことなどを求めることと思われます。
しかし、このような求めに応じない債権者も少なくなく、また、協力をしてもらっても、支払に窮することも多いのではないでしょうか。
そんなときに、視野に入れるべきなのは法人破産です。
いち早く法人破産をすることによって、経営者の方は早期に立ち直ることが可能となります。
会社の破産ができるか否かを判断するには、まず以下の点を検討します。
以上の事情聴き取りの結果、債務がどれくらいに縮小される可能性があるか、あるいは分割払いにしたときにどれくらいの期間で月々いくらくらいの支払いになるかの見込みを立てます。
その結果、資産総額よりも負債の方が大きく、今後の入金によっても、また債務を縮小・分割払いをしても支払いが困難と見込まれる場合には、破産が相当と判断します。
【参考】法人破産を検討する際に確認すべき注意点とは?手続き上のポイントを解説
弁護士から破産の方針や手続の流れ、メリット・デメリット等について相談者に説明し、納得が得られれば、法人と弁護士の間で委任契約を締結します。
そして、可能であれば即日、遅くとも数日以内には、各債権者に対して、弁護士から受任通知を送付します。
受任通知発送後、破産申立書の作成及び提出書類の収集を行います。
申立書には、事業内容や破産申立に至った経緯等を記載し、債権者一覧表や財産一覧表とともに、預金通帳の写しや各種財産の評価書等を収集して添付します。
法人が取締役会設置会社の場合は、取締役会を開催して、全会一致で破産の承認決議をして、議事録を作成することが必要です。作成された議事録は、破産申立の際に、裁判所に提出します。
取締役会設置会社でない場合には、個別に取締役の同意を取り付け、同意書を作成することが必要です。
取締役がひとりの場合は、その取締役は代表取締役になるので、その人が破産を決定すれば、破産手続を進めることが可能です。
【参考】法人破産ができない場合とは?企業が注意すべき法人破産のポイント
破産申立後の流れは、一般的には以下のとおりです。
破産申立書が完成し、必要書類が全てそろったら、管轄裁判所に一式を提出します。
提出後、裁判所書記官が申立書の記載内容や必要書類をチェックし、補充や書類の追完が必要であれば、申立代理人弁護士に連絡します。
申立書の補充や必要書類の追完が終了したら、裁判官による面接(一般的には申立人代理人弁護士の面接)が実施され、負債ができた原因や破産申立の経緯、資産内容や、免責不許可事由の存在が疑われる事情等について質問されます。
この手続の後、裁判官が、通常管財(財産状況等が複雑な場合の手続)を選択するか、少額管財(複雑な問題がない場合に選択される費用が低額の手続)を選択するかを判断します。
【参考】法人破産の手続の流れとは?企業再生・破産に詳しい弁護士が解説
裁判官面接の後、一定期間をおいて、破産手続開始決定が裁判所より発出されます。
裁判所において破産管財人候補者が決まったら、破産手続開始決定前に、申立人本人と代理人弁護士に対して管財人候補者と面談するよう、裁判所から求められる場合があります。
管財人候補者との面談においては、預貯金や資産の動き等細かな点について質問され、後日書類を追完するよう求められます。
破産手続開始決定が発出されると、破産者の財産の管理処分権は破産管財人に移転し、法人解散の効果が発生します。
法人は清算法人となり、会社財産の清算の目的の限度で法人格が残ることとなります。事業は継続できなくなります。
破産管財人は、弁護士の中から裁判所から選任されて、破産者の財産管理等を行います。主な業務は以下のとおりです。
【参考】法人・会社破産を行う際に準備すべき必要書類とは?法人破産に精通した弁護士が解説
債権者集会とは、債権者に対して、破産者が破産に至った事情や財産の換価・回収の状況等、破産手続に関する情報を報告・開示して、債権者の意見を破産手続に反映するために裁判所が開催する集会です。
出席者は、裁判官、破産管財人、破産者(法人代表者)、申立代理人及び債権者です。実際には、債権者が出席することは多くありません。
複雑な問題がなく、財産の換価や回収に時間を要しない法人破産では、1回の期日で終了します。
一方、財産の換価や売掛金債権の回収等に時間がかかる場合などは、複数回開催されます。
配当手続とは、破産管財人が、破産財団に属する財産を換価処分して得られた金銭を各破産債権の内容や債権額に応じて、破産債権者に平等に分配する手続です。
なお、破産手続の途中で、破産財団が破産手続の費用を賄うのに不足することが明らかとなった場合には、裁判所が「異時廃止」の決定を行い、配当を行わずに破産手続が終了します。
法人破産手続が廃止または配当を行った上で終結により終了した場合、裁判所書記官が法務局の登記所にその旨の登記を嘱託します。
廃止または終結の登記が完了した時点で、法人は消滅し、残債務も全て消滅します。
【参考】破産手続と清算手続の違いとは?|法人破産における基礎知識
支払不能・債務超過の状態に陥ると、債権者から執拗に返済を迫られることが少なくありません。
法人破産すれば、会社経営者は債権者の取立から解放されます。
法人破産をすれば、法人財産が換価され債務者に配当されて法人格も消滅しますので、負債はゼロとなります。
債務の負担から逃れられることは、法人破産最大のメリットです。
(なお、経営者の個人破産が伴う場合について後述します。)
法人破産が終了し、さらに後述するように経営者個人の破産手続きが伴う場合、その手続きにおいて免責が認められれば、負債はゼロになるので、会社経営者は新たな事業を立ち上げることが可能です。
法人破産をすると、法人財産は全て換価されて税金等の支払いや債権者への配当に回されます。法人格も消滅します。
そのため、事業を継続できなくなります。
法人破産は事業活動を停止して法人を消滅させるものなので、従業員を全員解雇しなければなりません。
【参考】法人破産を行う際の代表者責任とは?破産手続きを行う際に知っておくべきポイント
会社経営者が法人の債務を保証している場合、法人が破産すると債権者は経営者に請求をします。
法人破産は負債が大きく、経営者個人が支払うことは不可能な場合がほとんどです。
そのため、多くの場合、法人破産と同時に保証している経営者個人も破産しなければなりません。
【参考】法人破産と個人破産の手続きの流れとは?各種手続きの違いと申立を行う際の注意点
冒頭でもお伝えしたとおり、法人破産を早く行えば、それだけ経済的に立ち直るタイミングも早くなり、新たに事業を起こすことも可能となります。
経営難で悩んでいる経営者の方は、どうぞ1日でも早く法人破産を行ってください。
当事務所では、法人破産の専門ページを設けております。
法人破産の基本や、手続の詳細な流れ、他の債務整理手続との違いなどについて詳しく解説しております。どうぞご参照ください。
【参考】【無料相談】高崎・前橋等、群馬の法人破産手続きは地元・群馬の弁護士にご相談ください
当事務所では経営者様に向けた法的サポートを行っております。
経営者様からのご相談につきましては、初回に限り無料で対応しておりますので、
企業経営でお困りの方は、まずはぜひ一度お気軽にご相談ください。
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この記事を書いた人
山本 哲也
弁護士法人 山本総合法律事務所の代表弁護士。群馬県高崎市出身。
早稲田大学法学部卒業後、一般企業に就職するも法曹界を目指すため脱サラして弁護士に。
「地元の総合病院としての法律事務所」を目指し、個人向けのリーガルサービスだけでなく県内の企業の利益最大化に向けたリーガルサポートの提供を行っている。