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法人破産を行う場合、代表者には一定の責任が課される場合があります。そこで今回は、法人を行う際の代表者の責任やこれに関連するポイントについて解説していきます。
目次
法人破産の基礎知識
法人破産とは
法人破産とは、支払不能や債務超過に陥った法人の財産を処分して得た利益から優先的に税金や賃金を返済し、余った資産を債権者に配当して清算して、最終的に法人を消滅させる手続です。
法人破産を行う際のフロー
法人破産までのフローは以下のようになります。
破産の必要性の確認
まず、負債の整理を検討している法人について、現在の資産や負債、今後の入金予定などを弁護士が聴き取ります。資産総額よりも負債の方が大きく、今後の入金や債務の縮小・分割払いによっても支払いが困難と見込まれる場合には、破産が必要と判断します。
債権者への受任通知の送付
上の検討の後、弁護士から破産の方針や手続の流れ、メリット・デメリット等について説明し、納得が得られれば、弁護士との間で委任契約を締結します。
可能であれば即日、遅くとも数日以内には、各債権者に対して、弁護士から受任通知を送付します。
破産申立書の作成・書類収集
受任通知発送後、破産申立書の作成及び提出書類の収集を行います。
破産の承認決議
法人が取締役会設置会社の場合は、取締役会を開催して、全会一致で破産の承認決議をして、議事録を作成することが必要です。作成された議事録は、破産申立の際に、裁判所に提出します。
取締役が複数いるものの取締役設置会社でない場合には、個別に取締役の同意を取り付け、同意書を作成することが必要です。
取締役がひとりの場合は、その取締役は代表取締役になるので、その人が破産を決定すれば、破産手続を進めることが可能です。
【参考】法人破産の手続の流れとは?企業再生・破産に詳しい弁護士が解説
破産申立書の提出
破産申立書が完成し、必要書類が全てそろったら、管轄裁判所に一式を提出します。
破産申立書の審査
提出後、裁判所書記官が申立書の記載内容や必要書類をチェックし、補充や書類の追完が必要であれば、申立代理人弁護士に連絡します。
申立書の補充や必要書類の追完が終了したら、裁判官による面接(一般的には申立人代理人弁護士の面接)が実施され、負債ができた原因や破産申立の経緯、資産内容や、免責不許可事由の存在が疑われる事情等について質問されます。
この手続の後、裁判官が、簡易な手続で足りると判断した場合には、少額管財(予納金が20万程度)、そうでない場合には、通常管財(予納金が50万程度)を手続として選択します。
【参考】破産手続と清算手続の違いとは?|法人破産における基礎知識
破産手続開始決定
裁判官面接の後、一定期間後に、破産手続開始決定が裁判所より発出されます。破産手続開始決定が発出されると、破産者の財産の管理処分権は破産管財人に移転し、法人解散の効果が発生します。
法人は清算法人となり、会社財産の清算の目的の限度で法人格が残ることとなります。事業は継続できなくなります。
債権者集会
債権者集会とは、債権者に対して、破産者が破産に至った事情や財産の換価・回収の状況等、破産手続に関する情報を報告・開示して、債権者の意見を破産手続に反映するために裁判所が開催する集会です。
出席者は、裁判官、破産管財人、破産者(法人代表者)、申立代理人及び債権者です。実際には、債権者が出席することは多くありません。
配当手続
配当手続とは、破産管財人が、破産財団に属する財産を換価処分して得られた金銭を各破産債権の内容や債権額に応じて、破産債権者に平等に分配する手続です。
なお、破産手続の途中で、破産財団が破産手続の費用を賄うのに不足することが明らかとなった場合には、裁判所が「異時廃止」の決定を行い、配当を行わずに破産手続が終了します。
法人の消滅
法人破産手続が廃止または配当を行った上で終結により終了した場合、裁判所書記官が法務局の登記所にその旨の登記を嘱託します。
廃止または終結の登記が完了した時点で、法人は消滅し、残債務も全て消滅します。
法人破産における代表者責任
法人とその代表者は、法律上別人格として扱われます。そのため、法人が破産したとしても、そのことにより即代表者に責任が生じることはありません。
しかし、以下のような場合には、法人の代表者に責任が生じる場合があります。
破産の原因が代表者にある場合
代表者は会社に対して善管注意義務・忠実義務といった法的義務を負っています。これらは、簡単に言えば、代表者として会社の財産に損害が発生しないように注意すべき義務、会社の利益のために行動すべき義です。
これらの法的義務を怠ったために会社に多額の損害が生じ、破産しなければならなくなった場合には、法的義務違反を理由として、代表者が会社に対して損害賠償義務を負うことがあります。
代表者が法人の債務について連帯保証人になっている場合
法人が金融機関などから融資を受ける際には、代表者がその返済について連帯保証人になることが求められる場合があります。
連帯保証人になると、主債務者である法人と連帯して債務を負担する義務が生じるので、法人が破産した場合には、代表者が返済をしなければなりません。
【参考】法人破産を検討する際に確認すべき注意点とは?手続き上のポイントを解説
その他
代表者が職務に関して悪意又は重大な過失によって第三者に損害を与えた場合には、第三者に生じた損害を賠償する責任が生じることが会社法で定められています。
例えば、会社の財務状態が悪化して支払いをする見込みがないにもかかわらず、商品を購入したり手形を振り出して、取引相手に損害を与えた場合が該当します。
このような事情がある場合には、会社が破産しても、代表者に損害賠償責任が生じることとなります。
破産手続を行う際に知っておくべきポイント
ポイント①破産申し立てできる人が限定されている
法人破産を申立てることができる人は、以下のとおり限定されています。
法人(代表者)による申立
破産する法人自身は当然のことながら、破産を申立てることが可能です。法人は観念的な存在なので、実際の手続を行うのは法人の代表者となります。
法人が破産を申立てる場合には、取締役などの役員全員の同意が必要とされています(取締役会設置会社の場合には、取締役会決議が必要です)。
【参考】法人破産を行うとき代表者の破産はどうなる?知っておくべき注意点を弁護士が解説
理事や取締役等による申立
債務者である法人自身ではなく、「準債務者」と呼ばれる人が破産を申立てることも可能です。
準債務者に該当するのは、法人であれば理事、株式会社であれば取締役、合名会社や合同会社、合資会社であれば業務執行社員となります。
準債務者による破産申立は、法人において取締役などの役員全員の同意や取締役決議が得られない場合に行われます。
債権者による申立
支払不能になった法人自身ではなく、支払を受けることができない債権者が法人破産を申立てることも可能です。
債権者による破産申立には、不良債権を損金処理できる、債務者による不当な財産処分を回避できるといったメリットがある一方、高額な予納金を債権者が負担しなければならないというデメリットもあり、利用されることは多くありません。
ポイント②否認権行使の対象行為をしてはいけない
1でも述べたとおり、破産手続が開始されると、裁判所によって破産管財人が選任され、破産管財人によって手続きが進められていき舞う。
破産管財人には否認権という権利があり、これを行使することによって、法人から散逸した財産を取り戻すことが認められています。
具体的には、法人名義の資産を代表者個人名義に移した場合や、代表者が個人的に親しい債権者に優先的に弁済していたような場合が否認権行使の対象となります。
そのため、このような行為は回避しなければなりません。
ポイント③破産手続中の給与や役員報酬の支払い
法人が破産する場合には、破産申立前に全ての従業員を解雇するのが一般的です。
従業員に対して未払給与があった場合には、破産手続において一般の債権者に優先して配当がなされます。
一方、会社の役員に対する報酬は、従業委員の給与と異なり優先的に配当を受ける権利はなく、一般の債権者と同列で配当を受けることができるにすぎません。
役員報酬を優先的に支払うと、先ほど述べた否認権行使の対象となるので注意が必要です。
【参考】法人破産のリスクがある場合、未払金・給与の取扱いで注意すべきポイント
法人破産に関するご相談は弁護士法人山本総合法律事務所へ
法人破産をする場合には、代表者には一定の責任が課されており、また場合によっては代表者自身も自己破産などの債務整理をする必要があります。
これらを全て代表者自身が行うことには多大な困難があり、そのストレスも相当なものです。
法人破産は、専門家たる弁護士が行う必要性が非常に高いといえます。
法人が負債を抱えて破産を検討中の場合には、ぜひ当事務所までご相談ください。
法人破産のプロが、破産に至るまでの手続、代表者の方が抱える問題などについて、まとめて対応いたします。どうぞお気軽にご相談にいらしてください。
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この記事を書いた人
山本 哲也
弁護士法人 山本総合法律事務所の代表弁護士。群馬県高崎市出身。
早稲田大学法学部卒業後、一般企業に就職するも法曹界を目指すため脱サラして弁護士に。
「地元の総合病院としての法律事務所」を目指し、個人向けのリーガルサービスだけでなく県内の企業の利益最大化に向けたリーガルサポートの提供を行っている。