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問題社員に退職した頂くためには?企業が知っておくべきリスクと対処法を弁護士が解説

会社に問題社員がいると、就業環境が悪化し、優秀な社員が退職するなどして、会社の生産性が悪化するおそれがあります。

このようなリスクを回避するために、問題社員を解雇したいと考える経営者も多いですが、社員を解雇するためには法律上の厳しい要件を満たさなければなりません。要件を満たさない場合は不当解雇となり、解雇した社員から会社が訴えられる可能性があることにも注意が必要です。

そこで今回は、問題社員に退職して頂くために、企業が知っておくべきリスクと正しい対処法について解説します。

問題社員を放置するリスク

問題社員を放置するリスク

問題社員とは、労働能力に問題があったり、懲戒事由に該当するような非行があったり、心身の健康上の問題のため業務に支障をきたしていたりなど、雇用を継続するにあたり会社に不都合が生じている社員のことをいいます。

このような問題社員を放置していると、以下のような問題が噴出して会社の業績が悪化し、最終的には経営の危機に陥ることにもなりかねません。

会社に重大なダメージが及ぶ前に、問題社員を放置することによるリスクを把握しておきましょう。

社内の関係性の悪化

問題社員が1人でもいると、社内の関係性の悪化を招く可能性が高いです。

会社における業務のほとんどは、多かれ少なかれチームワークを要するものです。それにもかかわらず、業務命令に従わなかったり、協調性がなかったり、遅刻や欠勤を無断で繰り返したりする社員がいれば、チームワークは乱れてしまいます。

セクハラやパワハラを行う社員がいる場合は、そもそも円滑なチームワークは期待できないでしょう。

性格に問題がなくても能力が著しく不足する社員がいる場合も、他の社員が余分に作業をしてカバーする必要があるため、チームワークが乱れがちです。

このようにして社内の関係性が悪化すると生産性が低下し、会社の業績悪化につながる可能性が高いといえます。

優秀な社員の退職

問題社員がいることで就業環境が悪化した職場では、嫌気が差した社員が退職する可能性が高まります。

それも、優秀な社員ほど早期に退職する傾向があることに注意が必要です。なぜなら、優秀な社員ほど次の仕事が見つかりやすいため、問題のある職場に固執する必要がないからです。

場合によっては、比較的能力の低い員と問題社員のみが会社に残り、生産性が著しく低下してしまうおそれもあります。

社員間のモチベーション低下

問題社員の存在は、他の社員に対して精神的なストレスをもたらします。

退職せずチームワークを保って仕事をこなしている社員でも、そのために日々、多大な精神的ストレスを抱えていることでしょう。このような状況では社員間のモチベーションが低下するため、生産性の向上は望めません。

最悪の場合は、ストレスをため込んだ社員が心身に不調をきたし、休職や退職に至ることも考えられます。それだけでなく、問題社員の存在によって精神的苦痛を受けた社員が、安全配慮義務違反などを理由として、会社に対して損害賠償請求をしてくるおそれもあります。

【参考】「問題社員を解雇するには?」円満な解雇を実現するための対応策と過去事例のご紹介

問題社員に退職して頂くためには?企業側が注意すべきこと

問題社員

問題社員に辞めて頂きたい考えても、不用意に退職を迫ると、不当解雇やパワハラとして当該社員から会社が訴えられることにもなりかねません。

このような事態を回避するために、企業側は以下の点に注意すべきです。

問題社員であることの証拠の収集

まずは、当該社員にどのような問題があるのかについての証拠を収集しておくべきです。

単に気に入らない、他の社員から嫌われている、などの理由だけで、社員との雇用契約を一方的に打ち切ることはできません。そのため、当該社員が「問題社員」であることを確認し、かつ、そのことを証明できる証拠を確保しておくべきなのです。

無断での遅刻や欠勤は記録に残りやすいですが、業務命令に従わない、協調性がないなどの勤務態度は記録に残りにくいものです。問題が認められた場合は、その都度、業務日報に記載するなどして記録していく必要があるでしょう。

問題社員の能力不足についても、意識して記録しなければ証拠が残りにくいといえます。日々、どのような仕事を与えて、どれくらいの成果を上げることができたのかなどを、業務日報に記載するなどして、証拠化していきましょう。

セクハラ、パワハラなどのハラスメントの場合は、そもそも経営者や役員などの上層部が問題を把握していないことも少なくありません。少なくとも係長や主任など職場の責任者は、日々、就業環境に問題がないかを注意深く観察すべきです。

その上で、問題が認められた場合には上層部への報告を求めるとともに、その職場の社員たちから聴き取った事情を記録するなどして、証拠を確保していきましょう。

【参考】問題社員への対応方法とトラブルの予防策について弁護士が解説

客観的事実に基づいた判断の可否

証拠に基づく客観的事実が確認できたら、退職を求めることが可能かどうかを検討します。

問題社員に対して退職を勧める前に、解雇事由にあたる事実がないかを判断した方がよいでしょう。なぜなら、解雇事由が認められる場合には、解雇することも可能だからです。

ただし、解雇することに客観的・合理的な理由があり、かつ、解雇することが社会通念上相当であると認められる場合でなければ、解雇はできません。

ただちに解雇できるのは、無断欠勤が続いて当該社員と連絡が取れないなどのやむを得ない場合や、業務上横領など職務上の犯罪を犯したことが立証されたケースのように極めて悪質な場合など、限定的なケースにとどまります。

多くの場合は、解雇する前に問題社員に対して必要な指導・研修を行ったり、解雇以外の軽い懲戒処分などを行うプロセスが必要です。

不当解雇にあたらないための配慮

解雇事由が認められる場合でも、正当な手続きを踏んで解雇しなければ不当解雇にあたる可能性があります。

解雇の手続きは、まず、解雇する日の30日前までに解雇予告をします。即日解雇する場合は、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払わなければなりません。

問題社員に解雇を言い渡す際には、別室に呼び出すなどしてプライバシーに配慮しましょう。そして、口頭で理由を説明した上で解雇を言い渡し、解雇通知書を交付します。当該社員から求められた場合は、解雇理由証明書の交付も必要です。

なお、懲戒解雇を行う場合は、就業規則に記載された解雇事由に該当する事実の存在が必要となります。また、懲戒解雇の前に、当該社員に弁明の機会を与えることも必要です。

普通解雇の場合も、解雇を告げるために当該社員を別室に呼び出した際に弁明の機会を与えて、その言い分に耳を傾けた方がよいでしょう。

【参考】問題社員は解雇できる?企業経営者が知っておくべき解雇に関する基礎知識

問題社員対応における正しい解決策

問題社員_解決策

問題社員といえども、ただちに解雇できるケースはごく少数です。実務上、問題社員対応における正しい解決策は以下のようになります。

該当社員への丁寧なヒアリング・指導

まずは、当該社員から丁寧に事情を聴き取りましょう。これは、解雇を前提として弁明の機会を与えるのではなく、あくまでも事実を確認するためのステップです。

迷惑を受けている社員だけでなく、問題社員本人や周囲の第三者的立場の社員からも事情を聴き、記録などの証拠とも突き合わせて事実を浮き彫りにすることが重要です。

問題となる事実が確認できたら、退職を勧める前に当該社員への指導を行いましょう。

能力が不足する社員に対しては、業務に必要な知識やスキルを習得するための研修を受けさせるなどの教育が必要です。

遅刻・欠勤を繰り返す社員や、セクハラやパワハラをする社員に対しては、厳重注意して非を諭し、改善するための指導を行うべきです。

このような指導をしても改善が見られない場合でも、すぐに解雇したり退職を迫ったりするのではなく、解雇以外の軽い懲戒処分を行うべきです。このステップを踏まずに退職を迫ると、不当解雇にあたる可能性が高いので注意しましょう。

配置転換等の調整の可能性を考える

問題社員に対して退職を迫る前にもう一つ、配置転換等の調整によって解決できないかを検討することも重要です。

能力不足の社員であっても、現在担当させている仕事には向いていないのかもしれません。担当業務を変更すれば人並みの仕事ができる可能性もありますので、別の仕事を与えることも検討してみましょう。そのために、配置転換が有効となることもあります。

セクハラやパワハラの問題も、職場での特定の人間関係の中でのみ生じるケースも考えられます。職場の顔ぶれが変われば、それだけで解決する可能性もありますので、退職を迫る前に配置転換を検討してみましょう。

法的に問題がないよう退職勧奨を検討

解雇が可能と考えられるケースであっても、実際に解雇すると、当該社員が納得しない場合には訴訟に発展するおそれがあります。解雇の法的要件は非常に厳しいので、訴訟の結果、不当解雇にあたると判断される可能性があることも想定しておかなければなりません。

このような法的問題を回避するためには、解雇に踏み切る前に退職勧奨を検討するのがおすすめです。

退職勧奨とは、会社から社員に対して退職を勧め、合意によって雇用契約を終了することをいいます。最終的に社員自身の意思で退職することになるため、不当解雇のような法的問題は生じません。

ただし、当該社員が納得して合意した場合でなければ、実質的に不当解雇とみなされたり、パワハラにあたると判断され、法的問題に発展することもあります。退職勧奨に際して、次のような言動は控えるように注意しましょう。

  • 退職しないなら解雇すると言って脅す
  • 長時間にわたって執拗に退職するよう説得する
  • 大人数で取り囲んで退職を迫る
  • 当該社員が退職を拒否しているにもかかわらず、何度も繰り返し退職勧奨を行う

円満に退職してもらうためには、当該社員の言い分にも耳を傾けつつ、退職してほしい理由を丁寧に伝えて話し合うことが大切です。解雇予告手当や退職金を上乗せするなど、金銭的な補償の提示が有効となることもあります。

【参考】顧問弁護士が社員の相談にものれる?企業が知っておくべき顧問契約なポイントを解説

問題社員対応に関するご相談は弁護士法人山本総合法律事務所へ

弁護士写真

問題社員へ対応する必要性が生じたときは、まず弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士は労働問題に関する法律を熟知しているので、会社にとっての法的リスクを回避しつつ、適切に解決するための方針を提案してくれます。

その上で、当該社員への対応を依頼することも可能です。その際には、当該社員や被害者、周囲の第三者的立場の社員などからの事情聴取も会社に代わって行ってくれますし、証拠集めもサポートしてくれます。

問題社員対応については、ぜひ弁護士へご相談ください。

当事務所には企業法務の実績が豊富にあり、問題社員対策を含め労務問題に詳しい弁護士がそろっております。

問題社員対応にお困りの会社経営者の方は、ぜひ一度、当事務所へご相談いただけますと幸いです。

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この記事を書いた人

山本 哲也

山本 哲也

弁護士法人 山本総合法律事務所の代表弁護士。群馬県高崎市出身。
早稲田大学法学部卒業後、一般企業に就職するも法曹界を目指すため脱サラして弁護士に。
「地元の総合病院としての法律事務所」を目指し、個人向けのリーガルサービスだけでなく県内の企業の利益最大化に向けたリーガルサポートの提供を行っている。

山本 哲也

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