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目次
企業に対するクレームとは
クレームとは、顧客や取引先からの不当な要求行為や著しい迷惑行為を意味します。
近年、このようなクレームは、いわゆる「カスタマーハラスメント」として社会問題化しており、企業側が組織として主体的に対応すべきものという社会通念が形成されつつあります。
事業活動を営むうえで、クレームへの対応が必要になる場面には必ず遭遇します。
クレーム問題を放置してしまうと後述のリスクが現実化していますから、企業としても適切なクレーム対応が必須です。
適切なクレーム対応を行うためには、社内でクレーム対応マニュアルを作成し従業員へ周知することが有効な手段のひとつです。
クレーム問題を放置することのリスク
例①従業員の疲弊
企業が組織体とはいえ、実際にクレーマーと電話や対面でやり取りを行うのは従業員個人です。
クレーマーへの対処を行う従業員は大きな精神的ストレスを強いられます。それだけでなく、クレーム対応に長時間拘束されれば本来の業務に当てる時間が削られてしまい、残業を余儀なくされるおそれもあります。
このように、企業がクレーム問題を放置しクレーム対応を従業員任せにしてしまうと、従業員個人が身心ともに大きく疲弊しています。こうなると、クレーム対応を行う従業員個人の生産性が失われてしまいますから、ひいては企業全体の利益を損なってしまいます。
また、従業員がクレーム対応に適切に取り組んでいない自社に不満を持ち退職してしまうかもしれません。
例②労働問題等への発展
上記のとおり、クレーム問題を放置してしまうと従業員個人が疲弊してしまいます。
この従業員が「会社が自分を守ってくれなかった。クレーム問題を放置していた会社の責任を追及したい。」と考えたとしても、それは無理からぬことです。
従業員が企業へ損害賠償を求めたり会社を訴えたりすることで労働問題へ発展することも充分にあり得ることなのです。
実際、企業には使用者として従業員の身心の健康や安全に配慮する義務があります(企業の義務について詳細は後述します。)。
法令に照らしても、クレーム問題を放置してしまうと安全配慮義務違反を理由に企業に責任が発生するおそれがあります。
企業側に求められる雇用管理上の配慮義務
使用者である企業は、労働契約上、従業員(正社員に限らず、パートやアルバイトも含まれます。)に対し安全配慮義務を負います。
かつては判例上確立された義務に留まっていましたが、現在では労働契約法5条で法律として明文化された義務になっています。
安全配慮義務は、労働契約のあらゆる場面で遵守が求められます。
具体的には、
- 物的・環境的危険防止義務
- 作業内容上の危険防止義務
- 作業行動上の危険防止義務
- 寮・宿泊施設の管理義務
- 健康管理義務
に分類されます。
そして、厚生労働省が策定するパワハラ指針(事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して 雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号))においても、新たに「事業主が他の事業主の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等か らの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組の内容」が設けられ、企業として雇用する労働者を保護するためクレーム問題へ対応すべきことが明記されるに至っています。
上記のことから、安全配慮義務に基づき、企業は従業員の職場環境の改善や心身の健康を保つよう配慮しなければなりません。
クレーム問題を放置してしまうと、クレーマーと実際にやり取りを行う従業員の心身は疲弊していまい健康が害されます。
このようなことが起こらないよう、企業はクレーム問題に適切に対応しなければならないのです。
そして、クレーム問題への対応として最も基本的かつ効果的な手段が、社内で活用するためのクレーム対応マニュアルの策定なのです。
先ほどご紹介したパワハラ指針においても、クレーム問題による被害を防止するための取組の例としてクレーマーへの対応に関する「マニュアルの作成」が挙げられています。
【参考】消費者トラブル・クレーマー
社内にてクレーム対応マニュアルを作成することのメリット
クレーム問題の影響を削減
クレーマーは、商品やサービスに対するクレームのみならず、やり取りを行った従業員個人に対しても「態度が悪い」「お前のような下っ端では話にならない」などとしてクレームを加えることがあります(いわゆる“二次クレーム”。)。
こうした二次クレームが発生すると、対応した従業員個人に大きなストレスが加わってしまいます。
また、企業側としても対応しなければならない問題が増えてしまいますので、クレーム問題による影響・被害が従業員個人にも企業側にも拡大してしまいます。
そこで、予めクレーム対応マニュアルを作成しておけば、クレーム対応が企業全体として統一化できます。
その結果、クレーム対応が企業としての全社的対応となり従業員個人の判断に委ねられることがなくなります。
クレーマーとやり取りをする際も、従業員はマニュアルに従って対応すればよく、二次クレームに発展しそうな場面でも「社内規程で決まっている」と説明ができますので、従業員個人の負担を軽減できます。
企業としても、二次クレームを防ぐとともに従業員個人の負担軽減が図れますので、クレーマーによる被害・影響を削減できるでしょう。
社内での対応方針の統一
前述のとおり、クレーム対応マニュアルを作成し従業員に周知することで、クレーム問題への対応を社内で統一化できます。
企業全体として対応を統一化することで、個々の従業員のスキルや経験によるクレーム対応の品質のバラつきを抑えることができ、従業員個々の性質に左右されることなく一定水準のクレーム対応が実現できます。
また、“マニュアルに従えばこういう対応をとっている筈だ”との予測が立てられますので、企業側がクレーム問題に迅速に対応できるようになります。
第三者から見ても、対応が統一化できているということは全てのクレームに対し公平に対応できているということでもありますので、クレーム対応にバラつきが生じ公平性を欠くことで企業に対する信頼を害するような事態も防ぐことができます。
従業員の対応工数の軽減
従業員は、クレーマーとのやり取りを自己の判断に委ねられると対応に困るでしょうし、自身の権限で判断できないこともあるでしょう。
クレーム対応マニュアルが作成されていないと、判断を委ねられてしまった従業員は対応に迷い、逐一確認する作業が発生したり、本来は不必要や回答や補償を約束してしったりするかもしれません。
このように、マニュアルにより対応が統一化されておらず個々の従業員の判断に委ねられた状態だと、クレーマーへの対応の余計な工数が増えてしまいます。
クレーム対応マニュアルをきちんと作成しておけば、マニュアルに従って統一的な対応をすればよいので、従業員の対応工数をマニュアル記載の工数に限定できます。
マニュアルに記載されていない作業は不必要な作業となりますので、クレーマーに不当な要求をされてもそれに応じる必要がなくなり、従業員の対応工数の軽減につながります。
業種別|クレーム対応におけるポイント
サービス業全般(電話対応編)
まず心がけるべきなのは、落ち着いて冷静に対処するという意識を持つことです。
電話でクレームを言ってくる人は、怒ったり感情が高ぶっているケースが多いです。クレーマーにつられてこちらも冷静さを欠いてしまうと、問題を更に厄介にしてしまいます。
これは電話対応に限らず、対面での対応にも当てはまります。
まずはクレーマーの話を傾聴し、話の腰を折らないようにしましょう。
初期の段階で反論しても聴く耳を持たないでしょうし、更にヒートアップさせてしまいかねません。
「はい。」「さようでございますか。」といった相槌を打ちながら聴くと、傾聴する姿勢をアピールできます。
特に電話では、音声のみのやり取りとなるため、適度に相槌を打ち傾聴の姿勢を明らかにしおくことが重要です。
ある程度言い分を聞いたら、まずは謝罪するのが無難です。
といっても、この段階ではクレームの内容が事実なのか、正当なものなのか、どこに責任や原因があるのかが明らかになっていませんから、対象を限定して謝罪することが重要です。
「御迷惑をおかけしてしまい申し訳ございません。」「お手間をとらせてしまい申し訳ございません。」といったように、クレームの内容には触れずに迷惑をかけたこと自体を謝罪するフレーズが無難です。
自社に責任があることを認めるような謝罪をしてしまうと、後々に「責任を認めたのだから賠償しろ」等といった請求を受けるおそれがあります。
次に、事実関係の確認を行います。
クレームの内容が事実であり、かつ、自社に責任があるのであれば、改めて謝罪と対応策の提示を行うべきでしょう。
しかし、クレームの内容が事実ではない場合、自社に責任が無い場合、そもそも理不尽な内容である場合は、毅然とした態度で拒否する必要があります。
悪質なクレーマーに屈してしまうと、その場はやり過ごせるかもしれませんが、長期的な目線では大きな損害になってしまうかもしれません。
最後に、どの様な形であれ、電話を切るときには感謝を伝えるとよいです。
なるべく禍根を残さないようにし、無用なトラブルを避けるためです。
例えば、「この度は貴重なご意見を頂戴しありがとうございました。」のようなフレーズが使いやすいです。
なお、クレーム対応の際の電話は、全て録音するようにしましょう。
事実関係の調査のための記録や紛争に備えた証拠として有用です。
また、予め録音していることをクレーマーへ伝えることで牽制をかけ、暴言や脅迫的な発言を抑止する効果も期待できます。
【参考】クレーム対応研修の必要性とは?クレーム対応研修の種類と社内で実施すべき理由
飲食業
飲食業では、異物混入や食中毒に関するクレームがよくあります。
これらに関しては、もしクレームの内容が事実であった場合には自社に責任が発生する可能性が高いですから、慎重に事実の調査と原因の究明をすべきです。
異物混入はその場で料理を取り換えるといった迅速な対応も求められます。
料理の提供が遅いといったクレームもよく見受けられますが、これに対しては以下が一般的です。
①待たせたことの謝罪→②キッチンへ確認→③あと何分で提供できるか顧客へ伝える→④提供の流れ |
オーダーが通っていない場合は最優先で作るようキッチン担当者へ指示する必要があります。
飲食業におけるクレームは、顧客と対面した上でその場で迅速に対応することが求められるケースが多いです。
クレーム対応マニュアルが作成されていないと従業員が混乱してしまい適切な対応ができないおそれがありますから、よりクレーム対応マニュアルの作成が重要といえます。
【参考】飲食業の経営者様へ|群馬県内で顧問弁護士をお探しなら弁護士法人山本総合法律事務所へ
病院・クリニック
病院・クリニックでは、「待ち時間が長い」「スタッフに話しかけづらい」といったクレームがよく見られます。
病院・クリニックにおけるクレーム対応においても、以下の流れが基本です。
傾聴→謝罪→事実の調査→(必要であれば)解決策の提示→感謝 |
病院・クリニックで特に注意が必要な点は、謝罪の際に不必要な理由付けや言い訳ともとれる発言をしないことです。
例えば、「待ち時間が長い」というクレームに対し、「他の患者さんもお待ちいただいていますので、もう少々お待ちください。」といったように、“他の人も待っているのだからあなたも待て”といった趣旨の返答をしてしまうと、頭ごなしに指示されたと受け取り更に感情がヒートアップしてしまう人もいます。
不必要な理由付けをすることなく、「お待たせしてしまい大変申し訳ございません。もう少々お待ちください。」といったようにシンプルに謝罪したり、「お待たせしてしまい大変申し訳ございません。●曜日の●時頃でしたら空いておりますので長くお待ちいただかなくてもご案内できるかもしれません。よろしければ次回から御検討ください。」のように、謝罪+解決策の提示をセットで応答したりするのが有効です。
また、「病院もバタバタしていて忙しい」などといった言い訳もNGです。忙しいことは病院側の事情であり患者には関係ありませんので、クレーム対応としてはナンセンスです。
余計な言い訳をつけず、素直に謝罪することがポイントです。
【参考】医療・クリニック業の経営者様へ|群馬県内で顧問弁護士をお探しなら弁護士法人山本総合法律事務所へ
企業側のクレーム対応は弁護士法人山本総合法律事務所にご相談ください
今やカスタマーハラスメントが社会問題化しているように、企業には適切なクレーム対応が求められます。
クレーム問題を放置すると、自社の従業員に多大なストレスを与えてしまう、企業全体の生産性を低下させてしまうといったリスクを抱えてしまいます。
弁護士に相談すれば、クレーム対応マニュアル作成やクレーマーへの対応など、クレーム問題へ適切に対処するためのサポートを受けられます。
当事務所にはクレーム対応に苦慮する企業のお悩みを解決してきた多数の実績があり、たしかな経験とノウハウを持つ専門の弁護士がご相談をお受けします。まずはお気軽にお問合せください。
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この記事を書いた人
山本 哲也
弁護士法人 山本総合法律事務所の代表弁護士。群馬県高崎市出身。
早稲田大学法学部卒業後、一般企業に就職するも法曹界を目指すため脱サラして弁護士に。
「地元の総合病院としての法律事務所」を目指し、個人向けのリーガルサービスだけでなく県内の企業の利益最大化に向けたリーガルサポートの提供を行っている。