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労働基準法をベースとした残業代問題への対処法のポイントとは?群馬県で残業代請求に関する対応は弁護士法人山本総合法律事務所へ

従業員や元従業員からの残業代請求は、経営者にとって頭が痛い問題です。特に法令に則って適切に対応していたと考えていたにもかかわらず残業代が生じた場合には、どうすればよいのかわからなくなってしまうことでしょう。

そこで今回は、残業代請求の問題について総合的に解説をしていきます。

残業代請求に関する基礎知識

残業代請求

まずは残業代請求に関する基礎的な事柄について解説をしていきます。

残業代請求案件の傾向

以下では、近年の残業代請求案件の傾向についてポイントを解説します。

訴訟外の交渉による請求が多い

近年の残業代請求の傾向の1つめとして、最初から訴訟提起したり労働審判申立するのではなく、まず訴訟外の交渉を試みるケースが増えてきたことが挙げられます。

これまでは、ある日突然訴状や労働審判申立書が企業に届き、和解や調停を裁判所の介入の下で行うことの方が多かったように思います。これは労使間に信頼関係がなく、たとえ弁護士が労働者側についても、裁判外での話し合いは難しいとの判断であったためと思われます。

しかし、裁判や労働審判では解決までに時間がかかり、しかも、訴訟や労働審判にしたからといって、必ずしも従業員にとって100%満足する解決になるとは限りません。

また、請求する側にとっては裁判や労働審判を起こす場合、さらに弁護士費用が掛かることとなります。

そのような状況を踏まえ、相当程度の弁護士費用で迅速に解決が可能な訴訟外による交渉が増えてきたものと考えられます。

名ばかり管理職に関する請求が多い

労働基準法上、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」である管理監督者には、残業代を支給しなくてよいとされています。

この点、肩書は管理職でも、その業務の内容や権限において管理監督者とはいえない従業員がいる場合があります。これを通称「名ばかり管理職」といいます。

この「名ばかり管理職」を管理監督者として残業代を支払わない取り扱いをしている企業も少なくありませんでした。

しかし、「日本マクドナルド事件」と呼ばれるとある店舗の店長の残業代請求訴訟において、同社の店長は管理監督者には当たらないとして、残業代を認める判決が下されたことがありました。

この判決を境に、労働基準法上の管理監督者に該当しない「名ばかり管理職」の残業代請求が増えてきました。

物流業の残業代請求が多い

物流業は労働時間が長く、法定労働時間内に収まらない傾向が強いため、多くの場合、割増賃金を支払う必要があります。

しかし、実際は物流業の会社において、残業代を支払っているケースは多いといえません。

そのような中で、弁護士などに依頼して残業代を請求する事例が増えてきました。

先ほども述べたように、物流業は長時間労働になることが多いため、請求される残業代も高額なケースが多く、複数の請求を受けると企業側が莫大な金額を支払わなければならなくなることもあります。

【参考】従業員からの残業代請求の時効はいつまで?請求リスクを踏まえた対処方法を弁護士が解説
【参考】従業員から残業代請求をされた場合の対応方法を弁護士が解説

残業代請求が起きることによる企業のリスク

では、残業代請求が起きることにより、企業にはどのようなリスクが生じるでしょうか。

放置すると支払金額が膨大になる可能性がある

未払残業代が発生すると、企業は従業員から請求される場合があります。

先ほども述べたように、近年では訴訟外の請求が増えており、弁護士名で内容証明郵便を用いて請求される、労働組合を通じて請求されることが多いです。

しかし、企業側がこれに応じない場合には労働審判や民事訴訟を提起される可能性があります。

そして、未払残業代請求権の消滅時効は、民法改正により、行使可能時から5年に伸長されたため現時点((2024年9月時点)では当面の措置として3年とされています)、消滅時効期間満了に近くなってから、その分の遅延損害金を加えて金額が大きくなってから請求されることも少なくないのです。

また、民事訴訟において未払残業代が請求された場合には、これに加えて「付加金」を請求することができます。

「付加金」とは、未払残業代の請求に当たり、裁判所が使用者に対して支払いを命じる未払残業代と同額の金銭です。

未払残業代を放置していると、従業員から請求されて支払う場合には、元々の金額よりもかなり大きな金額になることが少なくありません。

企業規模によっては、財産状況が悪化するリスクを背負うことになります。

評判が悪くなる

未払残業代を放置して支払わないと、大企業の場合は報道される可能性があります。

そうではない場合でも、SNSなどに事実が投稿された場合には、拡散されるリスクがあります。

このような場合には、企業の評判が落ちて、売り上げやクライアントとの取引に影響が生じる可能性があります。

労働基準監督署による調査・勧告の可能性

従業員が、未払残業代について労働基準法37条違反であることなどを労働基準監督署に申告することも少なくありません。

労働基準監督署は、違反申告を受け付けると調査を行い、その結果違法状態が確認されれば、是正勧告等を行います。

企業規模によっては、是正勧告を受けたことが報道され、企業イメージが大きく落ちることにもつながりかねません。

また、調査対応に大きな手間や時間がかかるといった問題もあります。

【参考】従業員からの請求が急増!企業が理解しておくべき残業代の計算方法について

労働基準法における残業代請求のルール

労働基準法

労働基準法においては、労働時間が法定されており、これを超えた法定時間外労働に対する残業代について、ルールが定められています。

以下では、労働基準法における残業代請求の内容や注意点などについて解説します。

法定労働時間を超える場合のルール

労働時間が法定労働時間(原則1日8時間)を超える場合、残業代は、賃金に一定の割増率をかけて決定されます。

割増率は、以下のとおりとなっています。

  • 法定時間外労働:25%増
  • 休日労働:35%増

法定時間内であっても深夜(22時から5時)に労働させた場合には25%の割増賃金を支払う必要があります。

そのため、深夜に法定時間外労働をさせた場合には50%の割増率となります。

また、法定休日(原則週1日)外の労働が法定時間外労働にも該当する場合には、割増率がその分加算され、60%の割増賃金を支払うこととなります。

さらに1日の労働時間が8時間以内であっても、1週の労働時間が40時間を超える場合には、割増賃金の支払いが必要となります。

1か月に60時間を超える法定時間外産業がある場合には、残業代は50%以上の割増となり、深夜手当を含めると75%以上となります。

【参考】労働審判申立書が届いたらどうすれば良い?労働審判における企業の対応方法

法定時間外労働における注意点

企業が法定時間外労働に関して注意しておくべき点は、時間外労働の上限規制です。

原則として、月45時間・年360時間が限界となっており、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることができません。

この上限を超えると罰則が適用されることとなり、雇用主は懲役6か月以下又は30万円以下の罰金が課されます。

また臨時的な特別の事情により、先の上限を超える労働をさせる場合でも、月100時間未満・2~6か月平均80時間以内・年720時間以内という上限が課されることとなりました。

こちらの規制も罰則付きとなっていて、雇用主は懲役6か月以下又は30万以下の罰金を課されることとなります。

残業代問題に発展しやすい規程・ルール

残業代問題に発展しやすい規程・ルールとして「固定残業代」の問題が挙げられます。

固定残業代とは、毎月残業代見合いとして支給される一定額の金銭です。基本給に組み込まれている場合と、別途手当として支給されている場合があります。

企業側としては、固定残業代を支払っているので、残業代請求を受けてもこれに応じる必要はないと考えがちですが、そうではありません。

そもそも、固定残業代として適法といえるかどうかは、①基本給と割増賃金に当たる部分が明確に区別されていること、②就業規則は雇用契約書に明記され従業員に周知されていることが必要です。

また、固定残業代が適法であったとしても、それ以外に残業代を支払わなくてよいというわけではありません。

例えば、20時間分の残業代として固定残業代が支払われている場合には、これを超える残業については別途残業代を支払う必要があります。

企業の中には、固定残業代を支払っているので、それ以外の一切の残業代の請求を受け付けないという対応をしているケースが散見されますが、違法な対応と言わざるを得ません。

残業代請求されたら?企業が対処する際のポイント

残業代請求されたら?企業が対処する際の

では、残業代請求をされた場合、企業はどのように対応するのが望ましいのでしょうか。

ポイント①迅速な資料の開示

残業代が請求された際、まず、残業代計算の基となる資料の開示が求められる可能性があります。

具体的には、タイムカードや賃金台帳、就業規則、雇用契約書、賃金規程などが考えられます。これらの資料が求められた場合、企業は可能な範囲で速やかに対応することが推奨されます。

もし、資料の開示を遅らせると、従業員は手元にあるメモなどを基に概算で請求するかもしれません。

また、話し合いが進まないと判断されると、訴訟や労働審判に発展したり、労基署への通報やSNSでの情報拡散といったリスクもあると考えられます。

こうしたリスクを避けるためにも、資料開示には誠実に対応することが望ましいでしょう。

ポイント②正確な残業代を算出する

資料を開示した後、従業員側が残業代を計算し請求してくる場合がありますが、企業側としても適切に割増率を適用し、正確な残業代を算出することが重要と考えられます。

これにより、万が一訴訟に発展した場合、付加金や遅延損害金がどの程度加算されるかを見積もることができ、今後の交渉の方向性を見極めやすくなるかもしれません。

ポイント③残業代が発生している場合の支払い対応

計算の結果、残業代が発生している場合には、支払いに応じることが適切であると考えられます。

ただし、従業員の請求を全て受け入れる必要があるわけではありません。早期に支払う場合、和解金額を多少割り引いて合意することも選択肢となり得ます。

また、従業員の勤務態度に問題があった場合は、他の従業員から情報を収集し、交渉の材料とすることも可能かもしれません。

ただし、請求の根拠が揃っている場合、大きく割引くのは難しいケースがあると認識しておく必要があります。

ポイント④和解書に口外禁止条項を入れること

残業代請求をした従業員との間で合意に達し、和解に至った場合、和解書に「口外禁止条項」を含めることが望ましいとされています。

この条項がないと、従業員が他の従業員に対して請求した結果を共有し、他の従業員にも同様の請求を促すリスクが生じる可能性があります。

もちろん、企業としては正当な残業代を支払う体制を整える必要がありますが、一方で、残業代請求が頻発すると、企業の財政状況に影響を与えるリスクも想定されます。

そうしたリスクを回避するためにも、口外禁止条項を含めることが有効と考えられます。

最後に

近年では、名ばかり管理職や固定残業代といった問題も多く、企業側にとって不利な状況が見受けられます。

訴訟外での残業代請求も増えており、紛争を回避するためには誠実な対応が重要とされています。

残業代請求は、財政面や企業の評判に影響を及ぼすため、慎重かつ適切な対応が求められるでしょう。

当事務所では、企業側の残業代請求問題に詳しい弁護士が対応しておりますので、特に群馬県内の企業経営者の方はお気軽にご相談いただければと思います。

【参考】顧問弁護士が社員の相談にものれる?企業が知っておくべき顧問契約なポイントを解説

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この記事を書いた人

山本 哲也

山本 哲也

弁護士法人 山本総合法律事務所の代表弁護士。群馬県高崎市出身。
早稲田大学法学部卒業後、一般企業に就職するも法曹界を目指すため脱サラして弁護士に。
「地元の総合病院としての法律事務所」を目指し、個人向けのリーガルサービスだけでなく県内の企業の利益最大化に向けたリーガルサポートの提供を行っている。

山本 哲也

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