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目次
法人破産に関する基礎知識
法人破産とは
法人破産とは、支払不能や債務超過に陥った法人の財産を処分して得た利益から優先的に税金や賃金を返済し、余った資産を債権者に配当して清算して、最終的に法人を消滅させる手続です。
法人破産の種類
法人破産には、次の3種類があります。
同時廃止
同時廃止は、破産手続開始決定時点で、破産財団が破産手続の費用を賄うのに不足することが明らかである場合の手続です。
裁判所が同時廃止の決定を行った場合、破産手続は開始決定と同時に終了します。
最も簡易な破産手続で、費用も低額です。
しかし、破産手続は管財手続で行われるのが原則であり、法人破産で同時廃止手続が採用されることはほとんどありません。
通常管財
通常管財は、裁判所から選任された破産管財人が、破産した法人の財産を処分し、これによって得た利益から優先的に税金や賃金を返済し、余った資産を法人の債権者に配当して法人を清算する手続です。破産の原則的形態です。
最低でも50万円程度の予納金が必要となり、破産開始から免責までの期間も相当程度長くなります。
法人と債権者や利害関係人の間にトラブルがあるなど破産手続や管財業務が複雑・困難になる場合には、通常管財が採用されます。
少額管財
基本的な流れは通常管財と同じですが、破産手続や管財業務が複雑にならない場合に採用され、通常管財より短期間で終了します。
裁判所に納める予納金も通常管財の場合と比べると少額で済みます。
法人破産を行う上でのメリット・デメリット
法人破産のメリット
債権者の取り立てを免れることができる
支払不能・債務超過の状態に陥ると、債権者から執拗に返済を迫られることが少なくありません。
法人破産すれば、会社経営者は債権者の取立から解放されます。
債務の負担から逃れられる
法人破産をして免責決定が得られれば、負債はゼロとなります。
民事再生や会社更生などの再建型の債務整理では、法人の負債はゼロにはなりません。
債務の負担から逃れられることは、法人破産最大のメリットです。
新たな事業を始めることも可能
先に述べたように免責決定が得られれば、負債はゼロになるので、会社経営者は新たな事業を立ち上げることが可能です。
法人破産のデメリット
事業が継続できない
法人破産をすると、法人財産は全て換価されて税金等の支払いや債権者への配当に回されます。法人格も消滅します。
そのため、事業を継続できなくなります。
従業員を全員解雇しなければならない
法人破産は事業活動を停止して法人を消滅させるものなので、従業員を全員解雇しなければなりません。
従業員は職を失い、多大な不利益を被ります。
経営者の個人破産が伴うこともある
会社経営者が法人の債務を保証している場合、法人が破産すると債権者は経営者に請求をします。
法人破産は負債が大きく、経営者個人が支払うことは不可能な場合がほとんどです。
そのため、多くの場合、法人破産と同時に保証している経営者個人も破産しなければなりません。
法人破産申立までの流れ
①破産の必要性の確認
負債の整理を検討している法人から法律相談されると、弁護士は以下の視点で破産の必要性を考えます。
(1)現在の法人の資産
どれほどの現預金があるか、有価証券や、不動産など換価できる資産がどれほどあるか等を聴き取り、資産総額を見積もります。
(2)今後の入金予定
今後確実に入金される金額がどれほどあるかを聴き取ります。
(3)現在の負債
負債の総額を聴き取ります。
(4)債務が縮小された場合や、分割払いにした場合に支払いが可能かどうか
(1)から(3)までの事情聴き取りをもとに、債務がどれくらいに縮小される可能性があるか、あるいは分割払いにしたときにどれくらいの期間で月々いくらくらいの支払になるかの見込みを立てます。
以上の検討の結果、資産総額よりも負債の方が大きく、今後の入金によっても、また債務を縮小・分割払いをしても支払いが困難と見込まれる場合には、破産申立が必要ではないかと考えます。
②債権者への受任通知の送付
1の検討の後、弁護士から破産の方針や手続の流れ、メリット・デメリット等について相談者に説明し、納得が得られれば、法人と弁護士の間で委任契約を締結します。
そして可能であれば即日、遅くとも数日以内には、各債権者に対して、弁護士から受任通知を送付します。
③破産申立書の作成・書類収集
受任通知発送後、破産申立書の作成及び提出書類の収集を行います。
申立書には、事業内容や破産申立に至った経緯等を記載し、債権者一覧表や財産一覧表とともに、預金通帳の写しや各種財産の評価書等を収集して添付します。
④破産の承認決議
法人が取締役会設置会社の場合は、取締役会を開催して、全会一致で破産の承認決議をして、議事録を作成します。作成された議事録は、破産申立の際に、裁判所に提出します。
取締役が複数いるものの取締役設置会社でない場合には、個別に取締役の同意を取り付け、同意書を作成することが必要です。
取締役がひとりの場合は、その取締役は代表取締役になるので、その人が破産を決定すれば、破産手続を進めることが可能です。
【参考】法人破産を行うとき代表者の破産はどうなる?知っておくべき注意点を弁護士が解説
法人破産申立後の流れ
破産申立後の流れは各裁判所によって若干異なりますが、一般的には以下のとおりです。
①破産申立書の提出
破産申立書が完成し、必要書類が全てそろったら、管轄裁判所に一式を提出します。
②破産申立書の審査
提出後、裁判所書記官が申立書の記載内容や必要書類をチェックし、補充や書類の追完が必要であれば、申立代理人弁護士に連絡します。
申立書の補充や必要書類の追完が終了したら、裁判官が、相当と考えられる手続を選択します。先にも述べたとおり、法人破産では管財が原則です。
③破産手続開始決定
- 申立書等の審査後の後、一定期間をおいて、破産手続開始決定が裁判所より発出されます。一定期間をおくのは、破産管財人候補者の選任等が必要なためです。
- 裁判所によっては、破産管財人候補者が決まったら、破産手続開始決定前に、申立人本人と代理人弁護士に対して管財人候補者と面談しておくことを求めます。
管財人候補者との面談においては、預貯金や資産の動き等細かな点について質問され、後日書類を追完するよう求められる場合があります。 - 破産手続開始決定が発出されると、破産者の財産の管理処分権は破産管財人に移転し、法人解散の効果が発生します。法人は清算法人となり、会社財産の清算の目的の限度で法人格が残ることとなります。事業は継続できなくなります。
④破産管財人による業務
破産管財人は主に以下の業務を行います。
(1)破産者が有していた財産の換価、処分、回収
これにより、債権者に対して配当する財産を確定していきます。
(2)破産債権の認否
これにより、破産者に対する債権の有無及び額を確定します。
(3)債権者に対する配当
(1)により確定した財産(破産財団)の中から、(2)で確定した債権者の優先順位や債権額に応じて、配当を行います。
(4)裁判所及び破産債権者に対する報告
裁判所や破産債権者に対して、破産者の財産の換価や処分、回収の状況等を説明します。裁判所に対しては、この他、債権者への対応や財産回収のためなどに行っている訴訟の対応について報告します。
⑤債権者集会
債権者集会とは、債権者に対して、破産者が破産に至った事情や財産の換価・回収の状況等、破産手続に関する情報を報告・開示して、債権者の意見を破産手続に反映するために裁判所が開催する集会です。
出席者は、裁判官、破産管財人、破産者(法人代表者)、申立代理人及び債権者です。実際には、債権者が出席することは多くありません。
債権者集会には以下の種類があります。
(1)財産状況報告集会
破産手続開始決定後最初に開かれる債権者集会で、破産者が破産に至った事情や破産者の財産状況等が報告されます。
(2)廃止意見聴取集会
破産手続廃止の決定に当たって、債権者の意見を聞くために開催されます。
(3)任務終了による計算報告集会
破産管財人の任務が終了したときに、配当や手続費用などの計算報告を目的として開催されます。配当に関する情報提供を目的としています。
複雑な問題がなく、財産の換価や回収に時間を要しない法人破産では、(1)から(3)の債権者集会が1回の期日で行われて終了することもあります。
一方、財産の換価や売掛金債権の回収等に時間がかかる場合などは、複数回開催されます。
⑥配当手続
配当手続とは、破産管財人が、破産財団に属する財産を換価処分して得られた金銭を各破産債権の内容や債権額に応じて、債権者に分配する手続です。
なお、破産手続の途中で、破産財団が破産手続の費用を賄うのに不足することが明らかとなった場合には、裁判所が「異時廃止」の決定を行い、配当を行わずに破産手続が終了します。
配当手続には以下のものがあります。
最後配当
法律上の原則的な配当で、厳格な手続で行われます。実務上は、①中間配当を行った場合や、②同意配当・簡易配当を行うことが適当でないと判断された場合にのみ行われます。
同意配当
最後配当ができる場合に、届出債権者全員の同意のもとで、最後配当に代えて行われます。手続が簡略で、迅速に配当が行われる点で債権者の利益となります。同意配当を行うには、破産管財人が定めた配当表、配当額、配当時期及び方法について届出をした債権者全員が同意することが必要です。
簡易配当
最後配当ができる場合に、一定の要件のもとで最後配当に代えて行われる配当手続で、最後配当よりも手続が簡略です。
中間配当
一般調査期日(破産債権者表記載の各債権の存否・金額・優先順位等について破産管財人が調査をする期日)終了後、破産財団に属する財産の換価終了前に、配当に適当な金銭が破産財団に属すると認められる場合に行われます。
中間配当が行われた場合には、簡易配当はできなくなります。
追加配当
最後配当、同意配当又は簡易配当後、新たに配当できる財産が発見されたときに補充的に行われます。破産手続終結決定後になされる場合もあります。
⑦法人の消滅
法人破産手続が廃止または配当を行った上で終結により終了した場合、裁判所書記官が法務局の登記所にその旨の登記を嘱託します。
廃止または終結の登記が完了した時点で、法人は消滅し、残債務も全て消滅します。
【参考】法人破産の手続の流れとは?企業再生・破産に詳しい弁護士が解説
【参考】法人破産ができない場合とは?企業が注意すべき法人破産のポイント
法人破産を弁護士に相談・依頼するべき理由
理由①手続が長期間に及びストレスがかかる
法人破産は事前準備から申立、廃止または終結に至るまで、相当な時間がかかります。
この間ひとりで、専門知識もなく、債権者や裁判所、破産管財人に対応することは、大きなストレスとなります。
弁護士に相談・依頼すれば、ひとりで悩まずに済み、ストレスが軽減されます。
理由②煩雑な対応が求められる
破産に際しては煩雑な対応をすることが求められ、専門的・法的な知識がなければ乗り切ることが困難です。弁護士に相談・依頼すれば、この点に困ることはありません。
理由③労力や時間的負担の軽減
法人破産に当たっては、書面作成や資料の収集・整理のために多大な労力や時間が必要です。弁護士に相談・依頼すれば、これらを任せることができ、負担はかなり軽減されます。
【参考】法人破産を検討する際に確認すべき注意点とは?手続き上のポイントを解説
法人破産に関する相談は弁護士へ
会社の経営状態が悪化して破産を検討中の方は、ひとりで悩まずに、是非お早めに、弁護士にご相談ください。
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この記事を書いた人
山本 哲也
弁護士法人 山本総合法律事務所の代表弁護士。群馬県高崎市出身。
早稲田大学法学部卒業後、一般企業に就職するも法曹界を目指すため脱サラして弁護士に。
「地元の総合病院としての法律事務所」を目指し、個人向けのリーガルサービスだけでなく県内の企業の利益最大化に向けたリーガルサポートの提供を行っている。