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法人破産のリスクがある場合、未払金・給与の取扱いで注意すべきポイント

法人破産に関する基礎知識

法人破産の基礎知識

法人破産とは

法人破産とは、裁判所が選任する破産管財人が破産会社の財産を換価し、債権者に対し法令で定められる順番に従い公平に分配することを特徴とする清算型の法的手続です(清算型と対をなす再建型の法的手続として、民事再生や会社更生があります)。破産手続が完了すると破産を申し立てた会社の法人格は消滅します。

なお、巷でよく使われる“倒産”という言葉がありますが、これは正式な法律用語ではありません。法的手続としては、上記のとおり清算型の破産法に基づく「破産」や会社法に基づく「特別清算」、再建型の「民事再生」「会社更生」が挙げられます。法的手続によらずに任意の交渉で債務整理を行うことは「私的整理」と呼ばれます。

【参考】法人破産ができない場合とは?企業が注意すべき法人破産のポイントを弁護士が解説

 

法人破産を行うことのメリット・デメリット

まず、法人破産を行うことのメリットは、破産手続が完了すれば全ての債務が消滅することです。債務が消滅するため、手続完了後は弁済しなくてよくなります。加えて、会社の資金繰りに悩む必要もなくなりますから、気持ちが楽になるでしょう。また、債務や資金繰りの悩みから解放された状態で再スタートをきることができる点も大きなメリットです。

他方で、デメリットは、会社(法人格)が消滅してしまうため法人破産を申し立てた会社で事業を継続できなくなることや会社名義の資産は全て失われることが挙げられます。また、会社の債務が消滅するというメリットの裏返しとして、取引先や従業員といった債権者は自らの債権が回収できなくなってしまいますから、取引先や従業員との信頼関係は悪化してしまうというデメリットもあります。

 

破産リスクがある場合の未払い金、給与の対応

給与

資産がある程度残っているならば会社が支払うのが原則

給与、賞与、手当など名称を問わず、会社が従業員に対し支払うべき金銭は会社が支払うのが原則です。法人破産をする場合は必然的に従業員を解雇することになりますが、このときに発生する解雇予告手当(労働基準法20条)も会社が支払うべきものです。

そして、給与や賞与といった従業員に対し支払うべきこれらの金銭は、破産手続開始前直近3カ月の間に発生したものについては財団債権として随時弁済を受けることができます。3カ月より前に発生していた給与等も、優先的破産債権として、破産手続の中で優先的に弁済を受けることができます。例えば、取引先に対する買掛金があったとしても、取引先よりも従業員の給与等が優先して支払を受けることとなります。

給与未払いの場合、会社に資産が残っているならば上記の順番に従い会社から従業員に弁済されることとなります。

【参考】会社都合扱いで従業員を解雇・退職させる場合に企業が注意すべきこと

 

資産が残っていない場合の対処方法

給与未払いであっても、会社に資産が残っていない場合、会社は給与を払いたくても払えません。この事態をそのまま放置しておくと、従業員は会社から給与をもらえず、生活に困ってしまいます。そこで、そのよう給与未払いの事態を解決すべく、賃金の支払確保等に関する法律により、未払い賃金の立替払いの制度が存在します。

 

未払賃金立替払制度について

上記のとおり、給与未払いを解決するための制度として未払賃金立替払制度が存在します。この制度は、独立行政法人労働者健康安全機構(以下では単に「機構」といいます。)が主管となっているものです。

この制度を利用するためには、使用者・労働者がそれぞれ下記の条件を満たす必要があります。

使用者(会社)

  1. 1年以上にわたり事業活動を行っていたこと
  2. 法律上の“倒産”(ex破産)or事実上の“倒産”(=事業活動が停止して再開の見込みがなく、かつ、支払能力が無い状態)であることについて労働基準監督署が認定すること
    ※事実上の倒産としての認定は、賃確法に基づき行われるものであり、主に中小企業を対象にしています。

労働者(従業員)

法律上の倒産or事実上の倒産の日から6カ月前の時点から2年の間に退職した者で、未払いとなっている賃金の総額が2万円以上であること。

上記条件を満たしたうえで、未払賃金立替払制度の利用申請を行うと、機構から立替払いを受けられます。法律上の倒産の場合は法的に破産手続が行われるため、裁判所や破産管財人から証明書の交付を受け、これとともに立替払請求書等の必要書類を機構に提出します。事実上の倒産の場合、まずは労働基準監督署の認定を受ける必要があるため、労働基準監督署に対し認定申請書を提出します。認定通知書を取得したうえで、これと立替払請求書等を機構に提出します。

では、実際に立替払いされる金額がいくらになるかというと、年齢ごとに上限が設定されています。

  • 30歳未満:110万円
  • 30歳以上~45歳未満:220万円
  • 45歳以上:370万円

上記が上限となり、さらに立替払いされるのはこれらの80%となります。未払いの賃金全額が立替払いされるわけではないので注意しましょう。

なお、労働基準法に基づく解雇予告手当は、労働の対価ではないため未払賃金立替払制度の対象とはならないと考えられてるためこの点も注意が必要です。

 

法人破産、代表者破産に関するお悩みは弁護士へご相談ください

弁護士写真

スケジュールの策定

法人破産は、現状の資金繰りの把握、申立費用の工面、取引先や従業員への通知時期(そもそも通知を行わない場合(密行型)もありえます)、事業停止のタイミング、従業員への解雇予告手当の支払、在庫がある場合は在庫の処分時期など、裁判所へ破産を申し立てる前の段階のスケジュールの策定(段取り)が非常に重要です。従業員や取引先の数が多かったり、負債の額が大きい場合は、法人破産に伴う混乱が大きくなりがちですが、スケジュールの策定が甘いと、ただでさえ大きい混乱をさらに拡大してしまいます。

スケジュールを適切かつ緻密に策定しそれを実行することが、法人破産をスムーズに進めるための重要なポイントです。

専門家である弁護士に相談すれば、会社の状況に合わせて最適なスケジュールを策定できるでしょう。

弁護士が交渉窓口となる

法人破産を行うと、取引先や従業員から多数の問合せを受けます。取引先は自らの売掛金等の弁済を受けられなくなり、従業員は給与未払いとなるおそれがあるのだから焦るのは当然です。場合によっては会社側に対し法人破産を行うことにつき非難する債権者もいるかもしれません。

この様な場合に、弁護士が窓口となることで、混乱や手続の遅延を最小限に抑えることが期待できます。また、経営者自身が交渉の矢面に立たなくてよくなるので、経営者の精神的負担も大いに軽減できるでしょう。

代表者の自己破産等の問題も対応可能

会社が金融機関や信用保証協会から事業資金を借り入れている場合、ほとんどのケースでは会社代表者個人も連帯保証人となっています。連帯保証人は債務者と同じ立場にありますから、法人が破産したとしても連帯保証人である代表者個人の債務は存続してしまいます。これを防ぐべく、法人破産を行う場合は、代表者個人の自己破産も行うのが一般的です。

弁護士に依頼すれば、法人だけでなく代表者個人の自己破産も合わせて対応可能です。また、経営者保証ガイドラインを用いて、破産ではなく他の債務整理を執ることもできる可能性も生まれます。

債務整理の方法のご提案

資金繰りが厳しいといっても、破産が最適な債務整理の方法とは断定できません。冒頭で記載したとおり、法人の債務整理は特別清算や民事再生など、複数の種類があります。

弁護士に依頼することで、会社の状況に合わせた破産以外のベストな債務整理の方法の提案を受けられる可能性があります

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この記事を書いた人

山本 哲也

山本 哲也

弁護士法人 山本総合法律事務所の代表弁護士。群馬県高崎市出身。
早稲田大学法学部卒業後、一般企業に就職するも法曹界を目指すため脱サラして弁護士に。
「地元の総合病院としての法律事務所」を目指し、個人向けのリーガルサービスだけでなく県内の企業の利益最大化に向けたリーガルサポートの提供を行っている。

山本 哲也

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