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「問題がある社員を解雇することは可能?」「社員を解雇する際に気をつけておくべきことを知りたい。」
このように、問題社員をどうにか解雇できないものかと悩みを抱えていませんか。問題行動に対して改善が見られない社員には戦力外通告を告げたいもの。しかし、解雇の進め方を誤ると「不当解雇」となり、逆に会社側が訴えられてしまうリスクもあるため注意が必要です。
そこで本記事では、解雇の基本から解雇を検討する際の具体的な進め方まで解説します。問題社員の雇用に悩みを抱える経営者や人事部門を担当する方はぜひご覧ください。
目次
問題社員の定義
そもそも、問題社員とはどういった社員のことを指すのでしょうか。問題社員とは、社員本人の職務上の言動・行動、あるいは勤務態度に著しく問題が見られ、他の社員や会社経営に悪影響を及ぼす社員を指します。
もちろん人間である以上、仕事上でミスをすることはありますので、使用者側はそのことをある程度想定した上で管理することを求められます。しかし、中には自らの失敗を棚にあげて会社を非難したり、自らの正当性を周囲にアピールし他の社員のモチベーションを低下させるなど悪質な行動をとる社員もいます。
こうした問題行動を放っておくと企業経営を脅かすリスクもあるため、問題が小さいうちに対処することが必要です。問題社員はいくつかの類型に分けられるため、以下では各類型の特徴について解説していきます。
類型1.能力不足
職務を遂行する上で必要な研修・教育を十分に実施したにもかかわらず、能力・知識が著しく欠如し、顧客や同僚・上司から求められるレベルに到底及ばないケースです。同じミスを繰り返したり、何度も指導・注意をしても改善が見られないといった場合には解雇の対象となる場合があります。
ただし、能力不足に関しては、そもそも採用前の面接・面談といった選考段階での見極めも重要です。それだけでは本人の業務遂行力が十分に測れない場合は、数ヶ月程度の試用期間を設けて日常業務に支障がないか確認していくことも必要です。
類型2.横領等の非違行為
非違行為とは、一般的に違法行為のことを指します。非違行為にはさまざまな種類があり、例えば、会社の資金横領、インサイダー取引、備品の持ち出しといった犯罪行為があります。
その他にも、遅刻過多・無断欠勤・職場離脱(サボり)・業務命令違反といった、「職務懈怠(しょくむけたい)」も非違行為に該当します。職務懈怠は労働契約違反に該当するため、解雇処分の対象に該当します。
このように、非違行為は比較的軽微なものから刑事事件に問われるような大きなものまで、多種多様です。企業は社員の非違行為を生まないためにも、普段から研修・指導の機会を設けることが必要です。
類型3.メンタルヘルスの不調
メンタルヘルスとは、精神的・心理的健康状態を指します。近年、経済や市場が大きく変化する中で、業務や職場環境での強い不安・悩み・ストレスを感じる方が増えています。メンタルヘルスに不調をきたすことで、さまざまな問題行動が見られるようになります。
厚生労働省では、メンタルヘルス不調を以下のように定義付けています。
精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むものをいう。
メンタルヘルスの不調は、怪我や病気と異なり症状が見えにくいため、使用者側からすればどの程度の業務であれば耐えられるか判断が難しく、多くの企業の課題として挙げられています。本人の様子を観察したり面談したりしながら、業務量や業務内容の調整が求められます。
類型4.周囲との協調性がない
周囲との協調性がないことも問題行動の一つです。多くの会社組織では、一人だけで完結できる業務はほとんどありません。多くの場合、複数名が在籍する部署やチームに配属され、上司や同僚と円滑なコミュニケーションを図りながら業務を進めていきます。
しかし、問題社員は周囲との良好な関係が築けず、高圧的な態度を取ったり、度々口論を起こしたりします。放ったらかしにしておくと職場内の秩序が乱れ、他の社員へ悪影響を及ぼす可能性も高いことから、注意・指導を行うことが必要です。もし、再三にわたる指導でも改善が見られない場合は、懲戒処分を検討していく必要があります。
類型5.就業規則の逸脱
従業員はその会社の就業規則に沿って行動することが求められます。就業規則には、就業時間や休憩時間、休日のほか、万が一の場合の休みの取り方などが記載されています。
問題社員は、それらの規則を無視して無断遅刻や無断欠勤などの行動を見せることがあります。その他にも、就業時間にもかかわらず、外出先でプライベートの用事を済ませたり、副業禁止にもかかわらず副業をしていたりするケースがあります。社員が問題行動をしていないか把握できるような管理体制の構築が求められます。
類型6.業務命令の無視・反抗
会社では、経営者や部門の上司を通じて社員一人ひとりに業務を振り分けます。上司から命じられた業務に対して社員はその指示に従わなければなりません。しかし、問題社員が正当な理由もなしに業務命令を無視したり、反抗的な態度を取るケースが見られます。
上司からの指示に従わないことは労働契約違反に該当するため、本人への注意や指導が必要ですし、再三にわたって反省を促しても改善がみられない場合は、懲戒処分を検討していくことになります。
一方で業務に必要な知識・技術を十分に教えないうちに、業務を一方的に押し付けるのはパワーハラスメントに該当する可能性があるので注意が必要です。
解雇に関する基礎知識
解雇は従業員の人生に対して大きな影響力を持つ手段です。労働契約法では、解雇権の濫用を防ぐために、客観的に合理的な理由と相当性がなければ解雇は無効であると規定されています。
そのため、仮に社員に問題行動がみられたとしても、社員を解雇することは容易ではありません。ここでは、労働契約の基礎知識から解雇の基本・種類まで詳しく解説していきます。
労働契約とは
労働契約とは、労働者が使用者に使用されて労働すること及び使用者が労働の対価として賃金を支払うことを約した契約をいいます。労働契約法には、労働契約の基本理念として「労働契約の原則」が定められています。
労働契約の原則
- 労使の対等:労働契約は、労使が対等の立場での合意に基づいて締結・変更すべきものとする
- 均衡の考慮:労働契約は、労使が就業の実態に応じて均衡を考慮しつつ締結・変更すべきものとする
- ワークライフバランスの配慮:労働契約は、仕事と生活のバランスにも配慮して締結・変更すべきものとする
- 労働契約の遵守:労使が労働契約を遵守し、信義に従い誠実に権利を行使し、その義務を履行しなければならない
- 権利濫用の禁止:労使共に、労働契約に基づく権利の行使の濫用があってはならない
これらの原則に基づき、使用者と労働者の間の労働契約が締結・変更されます。一般的には、入社時に労働契約書を取り交わすことで、労働契約が締結されます。
解雇の基本
解雇とは、企業が従業員の合意なしに、一方的な意思表示によって労働契約を解除することを言います。解雇には、大きく分けて普通解雇・懲戒解雇・整理解雇という3つの種類があります。以下ではそれぞれ詳しく解説します。
普通解雇
普通解雇とは、労働者が労働契約上の自らの責務を果たすことが出来ない場合に行われる解雇です。ただし、客観的に合理的な理由・社会通念上の相当性がない解雇は「解雇権濫用」とみなされ、無効となります。
労働契約法第16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
そのため、従業員を普通解雇とする場合は、合理的な理由とそれを裏付ける根拠・証明が必要です。当然ながら、単に「気に入らないから」といった使用者の身勝手な都合で解雇することはできません。
もし不合理な理由で解雇をした場合、「解雇権濫用」として訴訟を起こされる可能性があります。
裁判で不当解雇との判決が下された場合は、解雇期間中の賃金を支払わなければならない上に、問題社員を雇用し続けることになり、会社としては大きなダメージを負うことになります。
懲戒解雇
懲戒解雇とは、従業員が企業秩序を乱したり、社会的信用を失墜させるような問題を起こした場合に課す制裁罰としての解雇のことです。懲戒処分にはいくつかの種類がありますが、懲戒解雇はその中でも最も重い処分です。
懲戒解雇となった従業員は即時解雇となりますが、懲戒解雇を行うためにはあらかじめ対象となる事由を就業規則に明記しておく必要があります。
懲戒解雇の対象事由の例として、以下のようなものがあります。
- 会社の社会的信用を著しく害する犯罪行為
- 業務上の地位を濫用した犯罪行為
- 経歴詐称
- 長期にわたる無断欠勤・音信不通
- 会社の資金横領・着服
整理解雇
整理解雇とは、会社が事業を存続するために行う人員整理のことで、一般的に「リストラ」と呼ばれます。整理解雇の場合は、従業員の問題ではなく会社側の都合による解雇となります。
整理解雇の要件・考慮要素として、以下のようなものがあります。
①人員整理の必要性 | 人員を減らさなければならない経営上のやむを得ない理由があること |
②解雇回避努力義務の履行 | 配置転換、出向、役員報酬のカット、希望退職者の募集など、解雇を回避するためにあらゆる努力を尽くしていること |
③被解雇者選定の合理性 | 解雇の対象者の選定基準が、客観的・合理的かつ公平であること |
④解雇手続きの妥当性 | 解雇の対象者および労働組合(または労働者の過半数を代表するもの)と十分に協議を重ね、整理解雇について納得を得ていること |
整理解雇を行うには、基本的にはこれら4つの要件を満たす必要があります。ただし、企業体力がないなどの理由から、必ずしもすべての要件を満たしていなくとも、総合的な判断の上で整理解雇が有効となるケースもあります。中小企業による整理解雇は、そのようなケースに当たりやすいと考えられます。
問題社員の解雇は可能なのか?
先述した通り、日本では長期雇用が保障されており、従業員を解雇することは容易ではありません。無理やり解雇に踏み切ってしまえば、不当解雇として訴訟を起こされる可能性があります。
仮に問題行動をしていたとしても、客観的に合理的な理由と社会的相当性が認められるだけの証拠やデータがなければ、裁判官を納得させることは難しいでしょう。
ここでは、日本での解雇のハードルの高さを示す事例と、解雇が認められる具体例について解説します。
解雇のハードルの高さを示す裁判例
日本では長期雇用制度を背景に、雇用の維持が最優先されてきました。現在でも、裁判所は、労働契約法16条に明文化されている「解雇権濫用法理」に基づき、解雇を容易に認めない傾向があります。
代表的な判例としては、昭和50年代に起きた「高知放送事件」が挙げられます。この事件は、高知放送の男性アナウンサーとファックス担当者が宿直業務で寝過ごしてしまい、早朝のニュース番組が放送されないといった放送事故を発生させてしまいました。
さらに、この男性アナウンサーは翌月にも別の担当者と寝過ごしてしまい、再び放送事故を発生させてしまったのです。それに加え、上司への事後報告を怠ったうえに、事実と異なる事故報告書を提出しました。
高知放送側は就業規則違反とみなし、男性アナウンサーを解雇処分としました。しかし、アナウンサーは不当解雇であると主張し、解雇処分の無効を主張して高知放送を提訴しました。
そして、最高裁の判決では「アナウンサーを解雇することは苛酷であり、社会通念上相当であるとは認められるものではない」として、アナウンサー側が勝訴となったのです。裁判所は、判断事由として、アナウンサーには悪意や故意はなかったこと、ファックス担当者が寝過ごしたことも事故の一因であること、ファックス担当者は譴責処分で済んでいることなどを指摘しています。
参考:高知放送事件(最判昭和52・1・31労判268・17)
解雇が認められる具体例
解雇が認められにくいといっても、全く認められないわけではありません。
ここでは2つの裁判例を見てみましょう。
- 海空運健康保険組合事件(東京高判h27.4.16・労判1122-40)
- フォード自動車事件(東京高判S59.3.30・労経速1197-5)
それぞれ解説します。
海空運健康保険組合事件(東京高判H27.4.16・労判1122-40)
海空運事業者を対象とした健康保険事務の業務を行う海空運健康保険組合Yが、従業員Ⅹを、事務処理の過誤及び業務遅滞を長年継続して引き起こし、繰り返し必要な指導をしたにもかかわらず改善しなかったことを理由として普通解雇した事件です。
一審(東京地裁平成26・4・11)は解雇を無効としましたが、東京高裁は、解雇に至るまでXに繰り返し必要な指導をしていたこと、Xの雇用を継続するために配置転換をしていたこと、Yは15名ほどの職員しかいない小規模事業所であり、その中で公法人として期待された役割を果たす必要があることに照らすと、XはYの従業員として必要な資質・能力を欠く状態にあり、その改善の見込みも極めて乏しく、Yが引き続きXを雇用することが困難な状況に至っていたといわざるを得ないとして、解雇を有効としました。
能力不足であれば解雇が有効となるのではなく、能力の改善の見込みがないことも必要とされていることに注意が必要です。
フォード自動車事件(東京高判S59.3.30・労経速1197-5)
外資系会社Yに、管理職である「人事本部長」として採用されたXが、勤務成績の不良を理由として解雇された事件です。
裁判所は、Xの勤務態度等からXが人事本部長としての適格性を欠くこと、YはXを人事本部長という地位に特定して雇用していることから、人事本部長よりも下位の職位・職種への置転換等を命ずべき義務を負うものではないことから、解雇を有効と判断しました。
一定の能力を有することを前提に採用した従業員については、一般の従業員よりも緩やかに解雇が認められる傾向があります。
解雇を行う際の注意点
企業が従業員の解雇を行う際はいくつかの注意点があります。いずれも労働基準法によって定められているルールであるため、解雇処分を検討する際は注意しましょう。
解雇制限期間中は原則として解雇不可
解雇制限期間とは、従業員が業務上負傷したり、病気になったりした場合にその療養のために休業する期間は解雇ができないと定めたものです。
- 業務上の負傷または疾病で休業する期間および、その後30日間
- 産前産後の女性が休業する期間および、その後30日間
ただし、上記の場合でも使用者側が「打切補償」を支払った場合や、天災事変などのやむを得ない事由が発生した場合は、解雇が可能です。
事前の解雇予告が必要
使用者が従業員を解雇する場合には、少なくとも30日前までに当該社員に予告するか、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。
平均賃金は、解雇事由が発生した日からさかのぼって3か月間に支払った賃金総額を、その期間の総日数で割ることで求められます。
ただし、以下のケースでは「解雇予告免除」あるいは「予告不要」となります。
<解雇予告の免除>
- 天災などのやむを得ない事由で事業の継続が不可となった場合
- 労働者の帰責性によって解雇をする場合
<解雇予告が不要>
- 日雇い労働者
- 短期雇用労働者
- 季節的業務従事者(4か月以内)
- 試用期間中の従業員
退職強要はNG
退職強要とは、会社が従業員に対して自主的な退職(辞職)を強要することを言います。
ここまで解説してきたように、会社は簡単には従業員を解雇することができません。しかし、従業員側が自主的に退職することは自由であることから、会社側は退職してほしい従業員に圧力を掛けて退職を強要し、あくまでも自主退職という形を取らせようとするのが退職強要です。
違法な退職強要があった場合、会社は従業員から損害賠償請求を受ける可能性があります。また、退職強要を受けて従業員が退職したとしても、強迫・錯誤を理由として退職の意思表示の効力が否定され、当該従業員を雇用し続けなければならなくなる可能性があります。
退職勧奨はOK
退職強要と似た言葉に「退職勧奨」があります。退職勧奨は、辞めて欲しい従業員に対して、自主的な退職を勧めることです。あくまで「お願い」であるので、最終的な退職の判断は従業員に委ねられます。そのため、法律的には退職勧奨に応じる義務はありません。
しかしながら、退職勧奨に従業員が応じないあまり、事実上退職を強制するに至ると、退職強要に該当する可能性があります。
具体的には以下のような行為は退職強要に該当しますので注意が必要です。
- 執拗に退職届の提出を求める
- 無視・暴言・不当な配置転換など精神的に追いつめる
- 退職のための面談を高頻度・長時間で実施する
ただし、退職強要と退職勧奨の線引きは曖昧であり、明確な判断基準がありません。例えば、平成23年に起きた損害賠償等請求事件(通称 日本アイ・ビー・エム退職勧奨)では、退職勧奨を何度も繰り返したことで従業員から提訴されたものの、判決では違法な退職強要とは認められませんでした。
このケースでは、日本アイ・ビー・エム側が当該従業員に対して、丁寧な説得を続け、退職後の支援まで行っていたことが判決のポイントとなりました。(東京地裁平成23年12月28日)
このように状況によっても異なるため、どこまでが退職勧奨の範疇として認められるかはあらかじめ弁護士に相談することをおすすめします。
解雇を検討する場合の具体的な流れ
ここまで従業員の解雇について解説をしましたが、ここまでお読み頂いた方であれば「従業員を解雇することは容易ではない」と実感頂けたでしょう。戦後に形成された長期雇用制度を背景に、日本では解雇権濫用法理が深く根付いているのです。
しかしながら、問題社員を放置することは、他の社員に悪影響をおよぼすリスクや、企業の信用を失墜させるリスクがあります。そのため、不当解雇とされないためにも適切なステップを踏む必要があります。ここでは解雇を検討する場合の具体的な流れを解説します。
現状把握
まずは問題社員の現状を把握します。問題社員と一言でいっても様々なタイプが存在します。人事部門は直属の上司らを訪ね、問題社員の具体的な問題行動を確認しつつ、どのタイプに該当するかを見極めることが必要です。
主な問題社員のタイプとしては以下が挙げられます。
- 勤怠不良:遅刻・無断欠勤が多い。病気で休みがち
- 非社交的:周囲とのコミュニケーションが図れない
- 能力不足:何度注意しても同じことを繰り返す
問題社員がどのタイプに該当するかを見極めることで、より具体的な対処方法の立案にも繋がるでしょう。
証拠収集
従業員を解雇する際に必要なものは、勤務状況・勤務態度・問題行動を記録に残すことです。例えば、当該従業員からセクハラ被害を受けたと報告があったとしても、その事実を客観的に証明できる証拠がなければ、解雇処分を下すことはできません。
もし、不当解雇であるとして従業員から訴訟を起こされた場合、証拠がなければ解雇処分は有効とは認められない可能性が高いでしょう。どういった証拠を収集すべきか迷った際は、専門家に事前に相談することをおすすめします。
処分方法の検討
問題社員のタイプが把握できたら、問題行動の対処方法を検討します。ただし、解雇を前提として話を進めるのではなく、どうやったら問題行動が見られなくなるかなど、あくまでも改善を促すことに重きを置く必要があります。
逆に、会社側が問題社員に対する適切な指導を怠っていた場合は、解雇の効力の判断に際して会社側に不利にはたらく可能性があります。例えば、「◯◯はどうせできないから」「◯◯は問題ばかり起こすから」と問題社員のレッテルを貼り付けて、指導・教育を行わなかったり、本人が業務で迷ったときに、相談や指示を仰ぐ担当者を決めていない場合などは、使用者側が従業員の管理義務を怠ったとみなされる可能性があります。
そのため、本人への処分方法を検討すると同時に、上司はいつ・何を・どのように指導していたか、それが適切であったかも含めて調査する必要があります。
処分の実施
本人の状況に応じて処分を実施します。場合によっては、「懲戒処分」を下すことになります。懲戒処分といってもいくつかの種類があります。最も重い処分は懲戒解雇ですが、よほどのことがない限り一回目で懲戒解雇を告げることはありません。
以下に懲戒処分の一覧をまとめています。
懲戒処分の種類 | 内容 |
戒告 | 主に口頭による注意指導。 |
譴責(けんせき) | 始末書提出を求める処分。 |
減給 | 給与の減給。ただし減給可能額について定めがある。 |
出勤停止 | 当該従業員を出勤させない処分。出勤停止期間中は給与も支払われない。 |
降格 | 処分時の役職から階級を下げる処分。 |
諭旨解雇 | 使用者側から退職をお願いする処分。ただし退職する場合は自己都合扱いとなる。 |
懲戒解雇 | 会社側が従業員を即時解雇する処分。ただし客観的合理的理由と相当性必要。 |
経過観察
処分を実施したら、その後の経過を観察します。ここで本人の態度に改善が見られるようであれば、解雇の必要はありません。また経過観察時は、当該社員本人だけではなく、組織全体の課題として再発防止に取り組むことが大切です。
例えば、社内規則を見直すことやシステム活用によって社員の業務負担を下げるといったことに取り組みます。問題自体に焦点を当てるのではなく、そもそも問題がなぜ起きてしまったのかを突き詰めて考えることが大切です。
解雇
問題社員が会社の名誉を失墜させる事件・トラブルを起こした場合や、再三にわたる注意・指導を与えても改善・反省が見られない場合は、普通解雇あるいは懲戒解雇処分を行います。
ただし、ここまで度々伝えたように、解雇を行う場合は客観的に合理的な理由と相当性があると認められるだけの十分な証拠が必要です。
万が一、裁判で不当解雇と言い渡された場合、会社は解雇期間中の未払賃金を支払う必要があるうえ、問題社員は雇用し続けなければなりません。
問題社員を解雇したい場合は、あらかじめ証拠となる情報を収集しておくことが重要です。ただし、専門知識を持たずに情報収集をしても、証拠として不十分となるリスクがあるため、あらかじめ弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
まとめ|問題社員の解雇に関するご相談は弁護士法人山本総合法律事務所へ
本記事では、経営者や人事部門にとって悩みの多い「問題社員の解雇」について、解雇の基本から解雇を行うまでの流れを詳しく解説しました。
社員の問題行動の報告があった際は、人事部門や部門責任者が当該社員および直属の上司に事実確認しましょう。その際、労働契約に違反するような大きな問題行為であったとしても、よほどのことでない限り解雇が認められることはありません。
まずは口頭による注意・指導や、段階を分けた懲戒処分を実施します。それでも業務命令に従わず、再三にわたって問題行動が繰り返される場合は解雇処分を検討するといったように、複数のステップを踏むことが重要です。
もちろん、犯罪行為や会社の信頼失墜に繋がるような大きな事件・トラブルが発覚した場合は、懲戒解雇を言い渡すこともできます。
ただし、問題社員に対してどのように法的に対処をすべきか、また、解雇をどのように進めるべきかは、法律に対する深い理解がなければ判断することができません。そのためにも、弁護士をはじめとした外部の専門家の意見を求めることが非常に重要です。
弁護士法人山本総合法律事務所では問題社員の解雇など、人事労務に関するあらゆる相談に対応しています。問題社員への対応にお悩みをお持ちでしたら、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事を書いた人
山本 哲也
弁護士法人 山本総合法律事務所の代表弁護士。群馬県高崎市出身。
早稲田大学法学部卒業後、一般企業に就職するも法曹界を目指すため脱サラして弁護士に。
「地元の総合病院としての法律事務所」を目指し、個人向けのリーガルサービスだけでなく県内の企業の利益最大化に向けたリーガルサポートの提供を行っている。