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目次
株主構成(持ち株比率)、株式譲渡
株主構成とは
企業を運営するときには「株主構成」に着目する必要があります。
株主構成とは、株主がどういった人によって構成されているか、ということです。
実際の株主構成は会社によって大きく異なり、例を挙げると以下のようなパターンがあります。
- 起業(当初に出資)した方が全部の株式を所有している
- 起業した複数の人が株式を持ち合っている(共同出資した場合)
- 代表者とその家族で株式を持ち合っている(家族経営の会社)
- 起業者以外の出資者、出資会社、投資会社などが株式を保有している
- 上場して多数の株主が株式を保有している
非上場会社では、代表者(経営者)本人や共同出資者、あるいは代表者とその家族が株式を保有しているケースが多いでしょう。
持ち株比率について
株主構成を考えるときには「持ち株比率」も意識する必要があります。
持ち株比率とは、発行済株式数のうちどのくらいの割合の株式を保有しているか、ということです。
持ち株比率により、株主に認められる権利が異なります。
- 持ち株比率が1%を超える
(取締役会設置会社において)株主総会の議案請求権 - 持ち株比率が3%を超える
株主総会の招集請求権
会計帳簿の閲覧及び謄写請求権(会社法433条1項) - 持ち株比率が3分の1を超える
株主総会の特別決議を否決できる権利 - 持ち株比率が2分の1を超える
株主総会の普通決議を可決できる権利たとえば取締役の選任や解任など、多くの重要な意思決定に多大な影響を与えることができます。 - 持ち株比率が3分の2を超える
株主総会の特別決議を可決できる権利事業譲渡や合併、会社分割、自己株式の取得などの重要なことを単独で可決させることができます。
起業したばかりの頃は、起業した方が株式を全部保有していても、その後の株式譲渡や相続などで株式が分散してしまうケースが少なくありません。株式譲渡を行う際には、「会社の所有権の一部を切り売りする」という自覚を持つ必要があります。
株式譲渡の活用方法
株式譲渡とは、株主が保有する株式を第三者へ譲渡することです。M&Aや事業承継の際にもよく利用されます。
- 自社を他社へ売り渡して経営を引き継いでもらいたい
- アーリーリタイアしたい
- 他社の事業を買収して自社で成長させていきたい
こういった状況で株式譲渡が非常に役立ちます。
株主総会
会社法には「株主総会」についてのルールも定められています。
株主総会は、会社の所有者である株主の意思決定を行うための非常に重要な手続きです。
会社法において開催の要領が規定されているので、正しい方法で進めましょう。以下で株主総会開催に関するルールや流れをご説明します。
株主総会の流れ
- 株主総会の開催を決定する
まずは取締役会などで株主総会の開催を決定する必要があります。 - 株主総会の招集通知を送る
公開会社の場合には2週間前、株式に譲渡制限がついている非公開会社の場合には1週間前までに送付しなければなりません。ただし取締役会を設置していない会社の場合、口頭による招集通知も可能です。 - 株主総会の準備をする
当日どのような流れで総会を進めるか、事前にリハーサルを行うなどして準備しましょう。 - 株主総会を開催する
事前に決めておいた流れに従って総会を進めます。 - 株主総会の議事録を作成、保存する
株主総会が終了したら、速やかに議事録を作成して保存しましょう。
総会終了後、必要に応じて役員変更登記を行ったり決算公告をしたりしなければならないケースもあります。
株主総会の種類
株主総会には「定時株主総会」と「臨時株主総会」があります。
定時株主総会は事業内容の報告、剰余金の配当などを決議するもので、会社法により開催が義務付けられています。
臨時株主総会は、株主の要求などにより必要に応じてその都度開催される株主総会です。
株主総会が取り消し、無効になるケース
株主総会の手続きや内容に重大な問題があると、取り消されたり無効になったり、あるいは不存在とされたりする可能性があります。
たとえば多くの株主に対して株主総会の招集通知を送らずに株主総会を開くと、株主総会が不存在となる可能性があります(最高裁昭和33年10月3日)。
株主平等原則に反する場合や違法な剰余金配当を行った場合などには株主総会が無効になる可能性があります。
株主総会招集通知を期限内に送らなかったなど、法令や定款に違反する行為があった場合には株主総会の取り消し事由になります。
株主総会に瑕疵があると、株主から訴訟を起こされる可能性もあるので、注意しましょう。
取締役
会社を運営していく際には、取締役や取締役会に関する会社法の規定も知っておく必要があります。
取締役は、株主総会決議によって選任します。
会社の代表権を持つ代表取締役は、取締役会設置会社の場合には取締役会において選任、それ以外の場合には株主総会決議などで選定します。代表取締役を定款において定める方法もあります。
取締役の解任は株主総会決議によって行います。代表者の持ち株比率が低くなっていると、株主から役員の解任請求をされるおそれが高まるので注意しなければなりません。
また取締役が違法行為をすると、株主から損害賠償請求される可能性もあります。
取締役は会社に対して「善管注意義務」と「忠実義務」を負うので、任務を懈怠して会社に損害を与えたら、賠償責任が発生するのです。
たとえば違法配当を行った場合、利益相反行為をした場合などに損害賠償責任が問題となるケースが多々あります。
ただし経営判断を誤って会社に損害を与えたとしても、必ずしも善管注意義務違反にはなりません。
取締役と株主との間でトラブルになってしまったら、できるだけ早期に解決する必要があります。トラブルが大きくなる前に弁護士までご相談ください。
取締役会
上場会社では取締役会を設置する必要があります。
一方、上場会社でない場合、取締役会設置は必須ではありません。ただし必要に応じて取締役会を設置できます。
取締役会とは、3人以上の取締役で構成される業務執行機関であり、以下のような事項についての決定権があります。
- 重要な財産の処分及び譲り受け
- 多額の借財
- 取締役や監査役、会計監査人などの選任、解任
- 支配人や重要な使用人の選任及び解任
- 支店など重要な組織の設置、変更、廃止
- 募集する社債の金額、社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項
- 内部統制システムの構築に関する決定
- 定款の定めにもとづいて取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人の会社に対する責任を免除
取締役会設置会社では、以下のような事項については取締役会で議決しなければなりません。
- 譲渡制限株式の譲渡·承認取得
- 株式分割
- 株主総会の招集に関する事項の決定
- 代表取締役の選任·解任
- 利益相反取引·競業取引の承認
取締役会を設置するメリット
非上場会社において、取締役会の設置は義務ではありません。設置するとどのようなメリットがあるのかみてみましょう。
- 迅速に意思決定できる
- 会社の信用が向上する
- 取締役の単独での身勝手な行動を防止しやすい
- 上場や監査役会の設置などの機関変更をスムーズに進めやすい
取締役会を設置するデメリット
一方で、以下のようなデメリットもあります。
- 役員の人数が増えて役員報酬の負担が増大する
- 株主が決定できる事項が減り、株主の権利が小さくなる
- 株主総会の招集に書面が必要となり、手間がかかる
非公開会社が取締役会を設置すべきかどうか悩んだら、上記のメリットデメリットを考慮して自社の状況に応じた選択をしましょう。
会社の機関設計に迷われたときには企業法務に詳しい弁護士がアドバイスしますので、お気軽にご相談ください。
企業訴訟
企業訴訟とは、広く企業活動に関する訴訟全般をいいます。
企業訴訟の種類
企業訴訟の代表例として、以下のようなものがあります。
株主総会決議に関する訴訟
- 株主総会決議不存在確認の訴え
- 株主総会決議無効確認の訴え
- 株主総会決議取消しの訴え
株主権をめぐる訴訟
- 株主権確認訴訟
- 株券発行·引渡請求訴訟
- 株主名簿名義書換請求訴訟
株主代表訴訟
- 取締役に対する責任追及訴訟
- 新株発行差止め請求、新株発行無効·不存在確認の訴え
計算書類・会計帳簿等・株主名義の閲覧請求訴訟
- 計算書類の閲覧·謄本交付請求
- 会計帳簿等の閲覧謄写請求
- 株主名簿の閲覧謄写請求
取締役の地位に関する訴訟
- 取締役の地位確認·地位不存在確認訴訟
- 取締役の地位についての登記請求訴訟
- 取締役の解任請求訴訟
取締役の報酬・退職慰労金に関する訴訟
- 取締役の報酬請求訴訟
- 取締役の退職慰労金請求訴訟
- 取締役の退職慰労金不支給(減額)にもとづく損害賠償請求訴訟
会社の取締役に対する責任追及訴訟
- 取締役に対する責任追及訴訟(剰余金の配当に関する責任など)
- 任務懈怠責任追求訴訟
- 競業避止義務違反にもとづく責任追求訴訟
- 経営責任、監視義務·監督義務違反にもとづく責任追求訴訟
- 利益相反取引に関する責任追及訴訟
会社の解散に関する訴え
- 合併無効の訴え
- 会社分割無効の訴え
- 株式交換無効の訴え
- 株式移転無効の訴え
企業訴訟では高度な法的知識が必要
企業訴訟では、個人の民事訴訟以上に高度な専門知識が必要です。
さまざまな類型があるため、種類に応じて会社法などの関連法令による規制や典型的な争点、立証方法などを把握しておかねばなりません。
弁護士に依頼せず自社のみで取り組むと、大きな不利益を受けてしまうリスクが高まります。また株主から訴訟を起こされている事実や取締役の不祥事などが大々的に報道されると、会社に対する信用低下も懸念されるでしょう。
企業訴訟に対応するには企業法務に精通した弁護士によるサポートが必須です。トラブルの兆候がみられたら、すぐにでも弁護士にご相談ください。
中小企業にこそ弁護士が必要
中小企業経営者の方は、「弁護士に相談するのは資金力のある大企業であり、自社には関係がない」と考えているケースも少なくありません。
しかし中小企業にも会社法が適用されますし、株主とのトラブルも発生する可能性があります。むしろいったんトラブルになったとき、コンプライアンス(法令順守)体制の整備が不十分な中小企業の方が、大きなダメージを受けるリスクが高くなるのが現実です。
風評被害とあいまって、会社が倒産してしまう可能性もないとはいえないでしょう。
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