- 契約書作成
- 契約書チェック
- 雛形を利用するリスク
- 契約書作成の流れ
目次
相手が払わない理由によって対応が異なる
一口に「債権回収」といっても、さまざまな手段があります。
- 内容証明郵便による督促、交渉
- 公正証書の作成
- 即決和解
- 調停
- ADR
- 支払督促
- 少額訴訟
- 通常訴訟
- 強制執行(差押え)
相手が支払わない理由や支払えない事情はさまざまですので、こういった手法を適切に選択して使い分けなければなりません。
債務者が支払わない主な理由
債務者が支払わないとき、よくある理由は以下の通りです。
支払能力が不足している
相手に支払能力がないため、支払いたくても払えないパターンです。
この場合、放っておくと相手が倒産したり他の債権者が差押えに移行したりして、こちらが遅れを取ってしまうおそれがあります。
交渉によっても支払われないなら、早めに支払督促や訴訟等を起こして回収しなければなりません。
相手が意図的に支払わない
支払能力はあり、支払わねばならないこともわかっているけれど、あえて支払わないパターンです。「このまま請求されなければ支払いを逃れられる」などと考えているケースも少なくありません。
相手が意図的に支払わない場合、弁護士が内容証明郵便で督促すると支払いに応じるケースがよくあります。
それでもどうしても払われないなら訴訟等の法的手続きが必要になるでしょう。
相手に抗弁事由がある
契約の取り消し、解除、相殺など相手に抗弁事由が認められるケースもあります。
そういった事情がある場合、相手の主張内容を吟味して本当に抗弁として成り立つかどうか検討しなければなりません。
抗弁が成り立たないのであれば、交渉や訴訟によって支払わせる必要があります。
単純に忘れている、支払い漏れ
ときには担当部署のミスや行き違いで支払い漏れが生じる場合もあります。
そういったケースでは、督促すると支払われる可能性が高いでしょう。
不良債権が発生したとき、弁護士にご相談いただけましたら、相手の財務状況について調査を行い、債権回収の可否や方法についてアドバイスいたします。自社で対応しようとしても、ずるずると引き伸ばされて結局支払いを受けられないケースが少なくありません。お困りの際には、できるだけお早めにご相談ください。
債権回収の方法
債権回収にはいろいろな方法があります。以下で代表的な手法をご紹介しますので、未払いの債権が生じてお困りの方はぜひ参考にしてみてください。
弁護士が代理人となって催促、交渉
自社の担当者や代表者が相手に請求しても支払いに応じてもらえないなら、弁護士が代理人となって相手に督促いたします。
弁護士から内容証明郵便が届くと、多くの企業や個人は態度を変えるものです。自社が請求していた段階では無視されていても、弁護士が代理人に就任した途端に相手が真摯に対応するケースが少なくありません。
交渉を進めて合意すれば、未払い債権を支払わせることが可能となります。
一方で、取引先との関係性を維持するために「いきなり内容証明郵便を送らないでほしい」と考える方もおられるでしょう。そういったご意向をお持ちの場合、まずは電話や普通郵便を送るなどの対応も可能ですので、お気軽におっしゃってください。
公正証書の作成
相手と合意ができたら、必ず合意内容を書面化すべきです。書面にしておかないと、相手が約束を破るリスクが高くなるためです。
このとき、相手によっては「公正証書」を作成する方法が有効となります。公正証書にしておけば、将来相手が不払いを起こしたときにすぐに相手の資産を差し押さえられるからです。
弁護士が対応する場合、必要に応じて公証役場へ申込みをして合意書を公正証書化しますので、回収の確実性が高まるメリットがあります。
債権譲渡
債権回収の方法として、相手から債権譲渡を受ける方法もあります。
相手が第三債務者に対して有している債権を譲り受け、こちらが第三債務者から取り立てることによって債権を回収するのです。
債権譲渡は将来の不払いに備える「担保」としても利用できるので、非常に有効な債権回収方法といえるでしょう。
ただし、適切な方法で契約を締結しないと、後に相手から債権譲渡契約の「無効」や「取消」を主張される可能性もあります。適切な方法で債権譲渡契約を締結し、より確実に債権回収を行うため、弁護士までお任せください。
支払督促
支払督促とは、裁判所から相手方に支払督促申立書を送付し、相手が異議を申し立てないときに相手の資産を強制執行する手続きです。ただし相手が異議を申し立てると通常訴訟に移行します。
裁判所からの書類を無視するような相手方であれば、有効な方法となるでしょう。
民事調停
民事調停は裁判所において紛争当事者が話し合い、問題を解決するための手続きです。
調停委員が間に入って当事者の意見を調整してくれるので、お互いに言い分がある場合でも解決できる可能性が高くなります。
ただしあくまで話し合いの手続きなので、相手が頑なに「支払わない」といっている場合には向きません。また相手に支払い能力がない場合には、調停をしている間に破産や民事再生をされる可能性があるので、早めに訴訟等手段をとるべきと考えます。
調停は適するケースと適しないケースにはっきり分かれる手続きなので、申し立てる前に弁護士へ相談してみてください。
少額訴訟
少額訴訟は、60万円以下の金銭支払を請求するときに利用できる簡易な訴訟手続きです。
原則的に1回の審理で判決まで出してもらえるので、通常訴訟に比べると時間の節約になります。
ただし相手方が通常訴訟への移行を求めると、通常訴訟へ移行されるので注意しなければなりません。少額訴訟の判決に相手方が異議を申し立てた場合にも効果が失われるので、必ず解決できるとは限りません。
安易に少額訴訟の手続きを利用するのではなく、事前に弁護士に相談して手続き選択が適切かどうか確認するようお勧めします。
通常訴訟
通常の民事訴訟によって債権や売掛金を回収する方法です。
訴訟で請求権の存在を証明できたら、裁判所が相手に支払い命令を出してくれます。
相手が故意に支払わない場合や不払いの理由となる抗弁に争いがあるケースなどで有効な方法といえるでしょう。
また相手方の住所が不明な場合には「公示送達」という方法によって判決を出してもらえる可能性があります。
訴訟の途中で和解が成立すれば、判決を待たなくても相手から支払いを受けられるので、必ずしも判決まで争う事案ばかりではありません。
仮差押
訴訟前に仮差押を行う方法も有効です。
仮差押とは、訴訟前に仮に相手の財産や債権を差し押さえて凍結させる手続きです。
判決を待っていると、相手が財産を隠したり処分したりするおそれがあるので、あらかじめ仮差押によって凍結し、動かせなくしておきます。
仮差押を行うと、相手に強いプレッシャーを与える効果もあります。
預金などを差し押さえられると、困った相手が「支払いをするので仮差押を取り下げてほしい」と連絡してきて、任意に支払いを受けられるケースも少なくありません。
仮差押は非常に有効な債権回収の手段となりますので、ご利用になりたい場合には弁護士までご相談ください。
強制執行
公正証書、確定判決、和解調書などの「債務名義」があれば、相手方の財産や債権を差し押さえて債権回収できます。
こういった差押えの手続きを「強制執行」といいます。
差押えの対象となるのは不動産や債権、動産で、自動車も強制執行の対象になります。
強制執行するときには、債権者が差押え対象の資産や債権を特定しなければなりません。
主に以下のようなものが対象となります。
- 不動産
- 預金、株式
- 保険
- 取引先(第三債務者)への債権
- 自動車
- 現金
- 動産類
債権回収は山本総合法律事務所へお任せください
より確実に債権回収を成功させるには、上記のような手段の中から最適なものを選択し速やかに進める必要があります。対応が遅れると他の債権者に先を越されたり倒産されたり財産を隠されたりするおそれが高まるので注意しましょう。
当事務所にご相談いただけましたら、豊富な経験と知識、ノウハウによって御社の状況に合わせた最適な回収方法をご提案いたします。弁護士が代行するとスピーディに債権回収できるケースが多いので、まずは一度ご相談ください。
債権回収は「時効」に要注意|法改正による
新しい時効制度とは
- 売掛金を回収できない状態が長期に渡って継続している
長期間支払われていない債権がある場合「時効」に注意が必要です。
債権には「消滅時効」があり、所定の期間をすぎると時効が成立して債権を回収できなくなってしまいます。
近年の法改正により債権の消滅時効について大きな変更がありましたので、正しく理解しておきましょう。
債権の時効期間は5年に統一
旧民法では、債権の時効期間が「債権の種類」によってまちまちでした。
民法が定めていた「原則的な時効期間」は10年でしたが、旅館や飲食料金、運送費などについては1年、通常の売掛債権や弁護士費用などは2年、商事債権は5年などとされていたのです。このように民法の原則より短い時効期間を「短期消滅時効」と呼んでいました。
ところがこのように債権の種類によって分類する短期消滅時効制度は、現代の感覚に適していません。そこで法改正により、以下のように時効期間が統一されました。
- 債権を請求できると知ったときから5年
- 債権を請求できる状態になってから10年
これまでのように、飲食店や宿泊料だからといって急ぐ必要はなくなりました。
また商事債権と民事債権の区別もなくなり、すべての債権が上記の5年または10年の時効適用対象となります。
消滅時効期間を過ぎると相手に請求をしても拒否されますし、訴訟を起こしても回収は困難となるので、時効が成立する前に、早期に債権を回収しましょう。
なお上記の改正法が適用されるのは、基本的に2020年4月1日以降に生じた債権です。
それ以前の契約にもとづく債権については、旧民法の短期消滅時効が適用される可能性もあります。その場合、1年や2年で時効になってしまう可能性もあるので、なおさら急ぐ必要があるでしょう。
時効成立を防ぐ方法
債権の時効が成立しそうな場合でも、止める方法があります。
更新
時効の更新とは、時効期間を巻き戻してまた当初からの数え直しにできることです。
時効が更新されると、また0からのカウントになるので、消滅時効は完成しません。
たとえば以下のような場合、時効が更新されます。
債務承認
債務者が「負債があります」と認めること。「支払います」と言った場合や一部の支払いを行った場合にも債務承認となります。
- 判決の確定
判決が確定した場合、10年間時効期間が延長されます。 - 強制執行
差押えをした場合にも時効が更新されます。
完成猶予
完成猶予とは、時効が一定期間成立せず猶予されることです。
以下のような場合に完成猶予されます。
- 訴訟提起、支払督促
訴訟提起すると、判決が出るまで時効の完成が猶予されます。支払督促の場合にも同じような効果が発生します。
- 仮差押、仮処分
仮差押や仮処分を行った場合にも時効の成立が猶予されます。
- 催告
催告とは、相手に支払を請求することです。催告をすれば6ヶ月間時効の完成が猶予されるので、その間に訴訟提起すれば債権を保全できます。催告するときには証拠を残すために「内容証明郵便」を使いましょう。
なお法改正前は「時効の中断、停止」という言葉が使われていましたが、法改正によって言葉が変わり(更新、完成猶予)内容も少し変更されています。
スピーディに債権回収するには弁護士へご相談を!
債権回収には「スピード感」が要求されます。
時効の問題はもちろんのこと、相手が財産隠ししたり倒産手続きをとったりする前に回収してしまわねばなりません。また時間が経つと資料が散逸してしまい、訴訟提起が難しくなる可能性もあります。
弁護士に任せていただけましたら、相手との交渉や内容証明郵便などの書面作成、仮差押などの手続きを代理いたします。依頼企業に余計な手間をかけさせることはありません。
スピーディに回収を実現し、貸し倒れ損失を防ぐことが可能となります。
取引先や顧客の不払い問題にお困りの方がおられましたら、お早めにご相談ください。
この記事を書いた人
山本 哲也
早稲田大学法学部卒業後、一般企業に就職するも法曹界を目指すため脱サラして弁護士に。
「地元の総合病院としての法律事務所」を目指し、個人向けのリーガルサービスだけでなく県内の企業の利益最大化に向けたリーガルサポートの提供を行っている。